2001 年 12 巻 6 号 p. 349-362
ヘキサクロロベンゼン (HCB) の環境排出とその発生源について既存の知見をレビューした。HCBは, 2001年に成立した残留性有機汚染物質 (POPs) に関するストックホルム条約において, 規制対象物質の一つにあげられており, 強い環境残留性と高い環境移動性を有する物質である。その主たる環境排出発生源は, 次の6種に分けられる。すなわち, 1) 製品としてのHCBそのもの, 2) 農薬中の不純物, 3) 塩素系有機溶媒製造過程での副生成物, 4) ごみ焼却, 5) 金属精錬, 6) その他の産業からのHCB発生, である。最近の見積もりによる世界の全排出量は, 年間10-100tonである。また, 日本の経時的排出量の見積り結果についても報告した。