廃棄物学会誌
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廃棄物処理とリサイクルの責任の所在
押谷 一
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1996 年 7 巻 6 号 p. 485-495

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抄録

廃棄物処理をめぐる法制度の目的が公衆衛生の向上, 生活環境の清潔保持といったことから, より広い環境問題や資源の保全の視点において対応することへと変化している
資源多消費型の生産・消費構造のもとで廃棄物は大量に排出され, さらに消費者ニーズの多様化によって, 有害な化学物質が含まれるため廃棄物処理は多くの問題を抱えている。
使い捨て型の生産・消費構造から資源循環型のそれへと転換することが「持続可能な経済活動」の鍵となっており, リサイクルの推進のために法制度が整備されつつある。
しかし, 一般廃棄物と産業廃棄物に区分され, それぞれ処理責任が体系的に示されているが, 実際には多くの廃棄物は, 自治体の処理体系に依存しているために, リサイクルを行うための責任所在が不明確である。特に安価な輸入資源に依存しているために, 事業者, とくにリサイクル資源を利用する製造者にとって, リサイクルの促進や廃棄物処理費用負担などの経済的なインセンティブが働きにくい。
そこで, 今後のリサイクル法制度の課題は, すべての廃棄物は資源あるいはエネルギーとしての利用が可能であるものが含まれているとの認識を持ち, 廃棄物の定義の見直しやリサイクルのためのコスト負担のあり方を検討することにあるように思われる。
「資源循環型社会」を構築するためには, ライフスタイルの見直しを含めて, さらに事業者の役割が強調されることが求められる。

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© 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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