1997 年 8 巻 4 号 p. 312-321
ダイオキシン汚染は, 今すぐにそれをなくすための対策をとらなければ手後れになるという深刻な事態にまで進んでいる。低レベルのダイオキシンが生体に及ぼす多様かっ微妙な影響が人の健康や生態系, 次世代や種の存続を脅かしている。そうした影響は従来のリスクアセスメントで正確に測り知ることはできない。ダイオキシンの発生に共通する要因は塩素およびその化合物である。が, 未確認あるいは情報の限られている発生源もあり, 未だダイオキシンの発生量はほとんど不明である。世界はダイオキシン等のPOPsを削減/撤廃するため, 地球規模の法的拘束力を持つ条約策定に向けて動き出した。その成功を期すために日本政府の責務も重大である。日本政府は, 人の健康や環境には許容できるダイオキシンのレベルはないという認識のもと, 予防原則を採用すべきであり, そのためにはクリーンプロダクションへの移行, 塩素やその化合物の生産, 使用の早急な段階的廃止が不可欠である。