文化人類学研究
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特集1 「大地的なるもの」の人類学
21世紀の「自然の権利」と大地の人類学
──法学の存在論的転回?──
植田 将暉
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2024 年 25 巻 p. 47-70

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抄録

 「自然の権利」とは、人間だけでなく大地や河川、動植物などの「自然」が諸権利や法的人格を持つ法制度を意味する。本稿はそのような「自然の権利」の歴史的展開と議論を見取り図的に整理し、憲法学と「大地の人類学」が交差するポイントを見出そうとするものである。

 法学に「自然の権利」が新しい考え方として登場したのは、アメリカ合衆国カリフォルニア州のミネラルキング渓谷におけるスキーリゾート開発計画をめぐるシエラクラブ対モートン事件の判決が下された1972年のことである。同判決の反対意見で、連邦最高裁判事のウィリアム・O・ダグラスが「渓谷」が原告となるのが適切であるという見解を示した。ダグラスの反対意見と、それが参照していた法学者クリストファー・ストーンによる同年の論文「樹木は原告適格を持つべきか?」が、「自然の権利」をめぐる現代の議論の出発点となった。その議論は、日本に環境倫理学とともに紹介され、1995年には鹿児島県奄美大島でのゴルフ場開発計画をめぐり、アマミノクロウサギなどの動物を原告として「自然の権利」訴訟が提起された。しかし日本の裁判所は、「自然の権利」は現行法の枠組み内では認められないとして、その主張を退けてきた。

 このような経緯から、従来「自然の権利」といえば、環境訴訟に関する議論と考えられるのが一般的だった。それに対して本稿では、訴訟ではなく立法によって「自然の権利」の承認を進めようとしている、21世紀の「自然の権利」の世界的な動向に目を向ける。2000年代以降、エクアドルやボリビアなどのラテンアメリカ、またニュージーランド、ウガンダ、スペイン、フランスなどで、立法部門において「自然の権利」法を制定し、権利保障を図る事例が相次いでいる。本稿では特にアメリカ合衆国の事例を取り上げ、そこに「自然と人間からなる共同体」の創設と「存在論の法典化」という2つの動きを捉え、憲法学と「大地の人類学」との交接点を浮かび上がらせる。

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