2022 年 14 巻 1 号 p. 26-35
地域薬剤師が血友病治療薬の提供に関わることは稀である.本研究は血液凝固因子製剤(以下,製剤)の処方せんを応需した保険薬局に着目し,患者への提供プロセスを質的手法により明らかにした.製剤の提供導入期にある管理薬剤師7名に半構造化インタビューを行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析を行った.17の概念からなる6つのカテゴリーは,薬局内の「原動力」「リスクへの懸念」「情報収集体制」「製剤の管理体制」から薬局と患者間の「距離感」「知識の活用」を介しプロセスを構成した.製剤を提供する保険薬局では高度薬学的管理が求められ,高額製剤を扱う経済的負担,薬剤師の責務,希少疾患領域への取り組み意欲などから6つのカテゴリーを生成した.製剤を提供し,自己成長と患者との良好な関係を築く上で,保険薬局では6つのカテゴリーを意識し,中長期に効果的なPDCAサイクルを活用することが重要である.