2026 年 18 巻 1 号 p. 89-94
筑波大学では,地域に貢献できる薬剤師を育成することを目指し,薬剤師向け臨床推論教育プログラムを開発している.そのプログラムでは,薬剤師が医師の臨床推論プロセスへの理解を通じて,適切な患者対応スキルを学ぶことができる.今回,嘔吐を主訴に来局した患者に対し,消化管出血を疑い受診勧奨を行った事例を経験した.事例は80歳代の男性.高血圧,膝関節症,網膜静脈塞栓症,不眠症の治療中であった.来局前日に嘔吐し,薬剤に由来するものではないかと相談を受けた.薬剤師は,臨床推論教育プログラムで学んだ症状の聞き取りチェックリストを用いて症状経過および随伴症状を確認し,黒色便を聴取した.薬剤師が,併用薬による消化管出血を考慮し受診勧奨したところ,患者は消化性潰瘍と診断された.本事例を通じ,薬局薬剤師が臨床推論に基づいた情報収集プロセスを実践することで,患者対応の質向上に寄与することが示唆される.