YAKUGAKU ZASSHI
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防已科植物アルカロイド研究(第232報) : Stephania venosa DIELSのアルカロイド
富田 真雄古川 宏池田 孝人
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1967 年 87 巻 7 号 p. 880-881

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抄録

今回著者等は以前ボルネオにおいて採集されたツヅラフジ科植物Stephania venosa DIELSのアルカロイド成分について検索した.まず実験の部に詳述するように植物のエタノールエキスを処理して得た粗製塩基をエーテルに溶解し, 常法によりフェノール性塩基部と非フェノール性塩基部に分離し処理したところ双方から共にm.p.146~148°の結晶を得, クロロホルム中での赤外吸収(IR)スペクトルにより同一物質であることを認めた.このm.p.146~148°の塩基はアセトン-エーテル混液より無色柱状結晶として得られ, その分析値はC20H23O4Nに一致し, 〔α〕D+221°(クロロホルム)を示す.また苛性アルカリにかなり難溶なことから, クリプト・フェノール性水酸基を有することが推測される.本塩基のNMRスペクトルは7.47τにmethylimino基, 6.26,6.10,6.10τに3個のmethoxy基のsignalを示し, aromatic proton領域には3.30τに1個のprotonに対応するsinglet, および2.92,3.15τに重心を持ちcoupling constant 8c.p.s.のquartetが存在する.以上のデータより本塩基はd-corydine(I)であることが予想されたので, Manske博士よりその標品の恵与を受け比較の結果, Nujol null中でのIRスペクトルが完全に一致することを認めた.したがって今回ボルネオ産Stephania venosa DIELSより単離した塩基はd-corydine(I)であることを確認した.

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