1972 年 92 巻 6 号 p. 655-660
薬物の代謝産物についての研究は古くから行なわれているが, その代謝産物の推定あるいは同定には通常繁雑な操作を必要としている.そこでわれわれは質量分析計が少量の試料で, しかもその中に多くの混合物を含んでいても, 他の測定機に比べてはるかに多くの情報を与えてくれることに着目し, 簡単な処理を行なった薬物服用尿の質量スベクトルを測定することにより短時間に多くの代謝産物を推定する方法を検討してきている.前報ではスルフォンアミド類のアセチル体について報告したが, 今回はsulfisomezoleを選びその代謝産物の検索を行なった.その結果簡単な処理をした試料尿の質量スベクトルより尿中に排泄された未変化体, アセチル体, sulfanilamide, そのアセチル体およびグルクロナイド等現在までに報告されている代謝物を容易に推定あるいは同定することができ, 同時に尿中からの代謝物の推定, 同定に質量分析計を利用する方法について考察したので報告する.