山梨英和大学紀要
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古英語hamm に由来するイングランドの地名:分布と拡大の推移
宅間 雅哉
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2011 年 10 巻 p. A9-A40

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抄録
古英語hamm はイングランドの地名を構成する重要な要素の一つで,「囲い地」「河畔の低地草地」「突起地形」「河川の湾曲部」「島状・谷状地形」を意味する.この古語に由来する地名は,通常語末の綴りが-hamとなり,大半がイングランド南部,とりわけ南東部と南西部に多く分布する.ただ多義的であるが故に,hammがいかなる意味で語源に関与するかによって,これらの地名は異なる分布状況を見せる.また初期には「河川の湾曲部」「河畔の低地草地」の意味で関与する場合が多いが,最盛期には「囲い地」の意味で関与するものが過半数を占める.文献初出年の新旧によって分布の推移を追跡すると,まず南東部に最初の分布が見られ,続いて中西部,中東部,南西部の順で分布域が拡大する.この推移は,『アングロサクソン年代記』に記されたウェセックス王国の版図拡大史にほぼ一致する.
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© 2011 山梨英和大学
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