山梨英和大学紀要
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〈鹿踊りのはじまり〉という物語 ー〈歩きつづける男〉の話ー
川島 秀一
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2007 年 6 巻 p. 1-15

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抄録

本稿は、童話集である『注文の多い料理店』のうち、その最後に置かれた「鹿踊りのはじまり」について、重層する<とき>の意味と語りの構造を中心に、<賢治>という<身体>がそのうちに刻印した《はじまり》の意味を考察したものである。あわせて、語り手でもある<わたくし>の身体性と、そこに刻印されたように思われる<もう一人の自分>について、それを<歩きつづける男>の物語として性格づけ、構造化した。特に最後の場面の中に、生命の始原から遠く隔たってしまい、いまやその<自己>のうちに閉ざされた<時間>を生きるしかない<もう一人の自分>、いわば《他者》としての<自己>を抱えることになる人間の背理と矛盾について、その意味を指摘した。あわせて、その<歩きつづける男>の存在的緑取りについても、他の作品の場合とあわせて、その性格を指摘した。

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© 2007 山梨英和大学
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