山口医学
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総説
C型肝炎ウイルスの持続感染機序と肝発癌機構についての一考察
日野 啓輔
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2005 年 54 巻 4 号 p. 103-108

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抄録

著者は山口大学医学部第一内科入局以来,主にウイルス性肝炎の病態と治療に関する研究を行ってきた.本総説ではC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染機序と肝発癌機構についてわれわれのデータを紹介しながら考察を行った.HCVが末梢血単核球細胞内に感染することにより宿主の免疫応答から回避する可能性や,外被タンパク内に存在する超可変領域の変異を繰り返すことによる中和抗体からの逃避が持続感染機序の一要因と考えられた.こうしたHCV持続感染は究極的には高率な肝細胞癌の発生へと繋がるが,肝発癌にはHCVがもたらす酸化ストレスが関与していると考えられる.しかし,HCVのみの酸化ストレスでは肝発癌には不十分であり,酸化ストレスを増強する2nd hitが重要と考えられる.臨床的には加齢,アルコールなど酸化ストレス増強因子はいくつか上げられるが,われわれはC型肝炎病態の特徴の一つである肝内鉄過剰に注目しC型慢性肝炎の鉄過剰状態に類似したHCVトランスジェニックマウスを作成し,肝発癌機構の解析を行った.その結果,HCV感染における鉄過剰状態はミトコンドリア障害を引き起こし,酸化ストレスを増強することで肝発癌を促進することが明らかとなった.今後はこの発癌モデルを利用して,C型肝炎からの肝発癌を抑制しうる効果的な治療を開発したいと考えている.

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© 2005 山口大学医学会
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