日本養豚学会誌
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原著
食品残さの発酵リキッド飼料化に用いる乳酸菌の特性評価
山内 慎也角川 幸治松本 英之土屋 義信井尻 哲
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2007 年 44 巻 2 号 p. 51-58

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抄録

著者らがフスマから分離したLactobacillus plantarum A305株は,乳酸収率が高くポリ乳酸生産用として研究が進められているアミラーゼ産生乳酸菌Lactobacillus manihotivorans LMG18011株に比べ,培養温度30℃および38℃において菌体の増殖とpHの低下が速く,対数増殖期の比増殖速度(μmax)はそれぞれ0.39h-1および0.49h-1であった。また,稲発酵飼料専用で「畜草1号」として販売され広く利用されているLactobacillus plantarum Chikuso1株に比べデンプン資化能を有することから,デンプン質を多く含む食品残さの乳酸発酵に適していた。さらに,大部分の乳酸桿菌はpH 2.5,20分間の処理で完全に死滅するのに対し,A305株19.0%の生存率を示すなど,胃酸や胆汁に対しても比較的耐性が高かった。
A305株は,洗米排水培地においても良好な生育を示し(μmax=0.65h-1),5℃で10日間保存しても,生存率は54%であった。
A305株は,食パン耳,ジャガイモ皮等を含む食品残さ培地においても良好な生育を示し,対数増殖期での比増殖速度μmaxは0.47h-1となり,MRS培地での値より高い値を示した。
発酵リキッド飼料のpHは,10時間の培養で4.3,乳酸濃度は8.4g/lとなった。豚病原菌の生育を抑え,豚の摂食性が低下しない範囲内にほぼ収まるものと考えられた。

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© 2007 日本養豚学会
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