日本養豚学会誌
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原著
効率的なブタ卵子採取・洗浄装置の開発
大竹 正剛塩谷 聡子大津 雪子河原崎 達雄
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2008 年 45 巻 2 号 p. 54-64

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抄録

本研究では,ブタ卵巣からの卵丘-卵子複合体(COCs)採取に伴う時間と労力の軽減を目的として,卵子採取装置(以下,採取装置),および卵子洗浄装置(以下,洗浄装置)を作製し,COCsの採取・洗浄の効率化について検討した。
採取装置は,先端に生け花に用いる剣山を装着した小型振動機と卵子保持シャーレからなり,振動をかけながら剣山で卵胞を破砕することにより,COCsを培養液中に浮遊させる仕組みとした。性能の確認のため,卵巣からCOCsを採取し,その処理時間,採取COCs数,形態評価,体外培養成績を従来法(卵子掻き出し法,吸引法)と比較した。1分間あたりのCOCs採取数は,採取装置使用で最大3.8倍に増加した(採取装置 : 92.7±26.1個/分,掻き出し法 : 37.4±5.3個/分,吸引法 : 24.3±2.4個/分)。採取卵子の体外発生培養成績では,成熟率(74.1±8.3% vs. 65.1±10.9%,68.1±16.2%)と単為発生胚の胚盤胞形成率(22.5±9.5% vs. 30.0±18.9%,28.1±17.2%)に有意な差はなかった。
洗浄装置は,底面にCOCsよりも大きなサイズ(300×300μm)のメッシュをもつ濾過器Iと小さなサイズ(100×100μm)の濾過器II,および受け皿からなり,筒に浮遊液を通すことで,COCsと大きさが異なる浮遊物を除く仕組みとした。性能の確認のため,卵巣10個を処理して得られたCOCs浮遊液20mlを通し,その処理時間,要した洗浄液量を定法と比較した。処理時間は,洗浄装置使用により約半分に短縮され(洗浄装置 : 169.7±40.4秒vs. 定法 : 318.3±59.0秒),洗浄液量は2/3に削減された(32.8±10.2ml vs. 51.7±5.8ml)。
以上の成績から,開発した採取装置,洗浄装置の有用性が明らかとなり,作業者の時間短縮と労力軽減が可能となった。

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© 2008 日本養豚学会
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