日本養豚学会誌
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原著
陶器部材を用いた豚舎汚水からのリン除去・回収技術
脇屋 裕一郎坂井 隆宏古田 祥知子関戸 正信河原 弘文鈴木 一好
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2009 年 46 巻 3 号 p. 159-170

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抄録

有用資源であるリンの回収・再資源化技術として,リン酸の結晶化反応を利用した豚舎汚水からのリン除去・回収技術が開発されているが,この技術を普及させるためには,簡易化・低コスト化を図るとともに,結晶物(MAP : Magnesium Ammonium Phosphate)の回収効率を高める必要がある。佐賀県は陶磁器の産地であり,素焼きセラミックスは多孔体構造であるため,結晶物の付着性が高く,またMAP反応の誘発に必要なMg液に浸漬処理することで多孔体部分にMgが付着して結晶物回収量が増加する可能性が考えられる。そこで,陶器系材料を利用した回収部材を作成し,部材の形状およびMg液に浸漬処理をした場合の結晶物回収に及ぼす影響について調査を行った。MAP反応槽は,佐賀県畜試施設および農家実証施設の既存標準活性汚泥処理施設の2箇所に設置して,曝気用散気管および塩化マグネシウム(以下MgCl2・6H2O)溶解タンクを設置して,曝気および30% MgCl2・6H2O液の添加(10L/日)を行った。回収部材は陶器系材料を利用して,凹凸構造の異なる2種類を作成し,容器に固定してMAP反応槽に投入し,成分除去およびMAP回収状況について調査を行った。また,供試した回収部材の半量について,30% MgCl2・6H2O液に浸漬処理を行い,未処理部材との比較も併せて行った。供試汚水は,豚舎から排出された汚水を固形物除去後にMAP反応槽に1日当たり30~50回程度に分割して投入した。試験期間中の汚水中成分について,MAP反応の誘発により全リンおよび水溶性リンが除去され,また,他の水質項目についてもMAP反応に影響を及ぼすことなく90%以上の高い除去率が得られた。回収部材における全付着結晶等量は,佐賀県畜試施設および農家実証施設のどちらも凹部分が狭い星型部材の方が多くなることが確認され,また,30% MgCl2・6H2O液に浸漬処理した回収部材が,未処理部材と比べて顕著に多くなった。回収した結晶物は,X線解析および成分分析を行った結果,MAPであることが確認された。

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© 2009 日本養豚学会
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