日本養豚学会誌
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原著
塩ビ管を用いた簡易型MAP回収装置によるふん尿分離豚舎汚水中のリン回収技術の検討
川村 英輔田邊 眞竹本 稔上山 紀代美鈴木 一好
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2011 年 48 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

塩ビ管を用いた簡易な構造のMAP回収装置を試作し,水溶性リン酸態リン濃度が低いふん尿分離型豚舎の豚舎汚水からリン結晶化法によるリン回収を試みた。反応槽下部からの曝気により反応槽内の豚舎汚水のpHを上昇させ,水溶性リン酸態リンを結晶性リン酸態リンに誘導することが可能であった。その際,曝気強度が大きいほど短時間でpHが上昇した。反応槽容積に対する汚水投入量とpH上昇時間の検討結果より,反応容積200lの本装置の場合,曝気強度30m3/m3・時の条件で汚水滞留時間1時間が必要であったことから,処理能力は約4.8m3/日であることが分かった。本装置での水溶性リン酸態リンの結晶化率は,pH 7.7, Mg/PO4-P比0.48の豚舎汚水を用いた場合,マグネシウム源を添加しない条件では41%であるが,反応後の処理水中の水溶性マグネシウム濃度が40mg/l以上になるようマグネシウム源を添加する条件では,結晶化率は75%まで向上することが明らかとなった。次にpH 6.94,水溶性マグネシウム/リン酸態リンのモル比は0.56,水溶性リン酸態リン濃度63mg/lの豚舎汚水を用いて,簡易型MAP回収装置のリン回収量を検討した。装置の運転条件は汚水滞留時間1時間,曝気強度45m3/m3・時,30%MgCl2溶液の添加量を汚水量の0.1%とし,MAP付着部材として槽内にステンレス製の網カゴを浸漬した。夏季の44日間のMAP回収量は,5.3kgであった。投入水溶性リン酸態リン1kgあたり0.61kgのMAPが回収できた。以上のことより本装置は,反応槽下部からの曝気によりリン結晶化反応に必要な汚水のpH上昇を図ること及びマグネシウム源を添加することで,水溶性PO4-Pの結晶化率を70%以上とすることが可能であった。この条件では水溶性リン酸態リン濃度が62.8mg/lの豚舎汚水1m3から38g/m3のMAPが回収可能であった。

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© 2011 日本養豚学会
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