日本養豚学会誌
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総説
豚系統造成集団を用いたQTL解析
上本 吉伸小林 栄治鈴木 啓一
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2011 年 48 巻 4 号 p. 147-163

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抄録

豚集団では,主として品種間交雑集団を用いた量的形質遺伝子座(QTL)解析が行われ,いくつかの形質については,その責任遺伝子が特定されるに至っている。しかしながら,豚の育種改良について考えた場合,改良の対象は一般的には純粋種であるため,交雑集団で得られたQTL情報を純粋種の改良に直接利用できるとは限らない。そのため,QTL情報を純粋種の改良に利用するためには,純粋種内で分離しているQTLを検出する必要がある。日本では,目的形質に関して複数世代育種価を指標とした選抜を行うことで品種ごとに系統豚を造成しており,これらの集団がQTL探索の対象集団として有用であることが期待される。そのため,我々は,宮城県で実施されたデュロック種系統造成集団を用いてQTL解析を行った。用いた集団は宮城県畜産試験場で7年間総合育種価により選抜したデュロック純粋種集団である。選抜形質は一日平均増体量,ロース断面積,背脂肪厚および筋肉内脂肪含量である。本研究では,選抜形質だけでなく,成長形質,体尺形質,枝肉形質,生理的形質および肉質形質などの相関形質についても同時にQTL解析を行った。系統造成集団を用いたQTL解析により,多くの形質で有意なQTLが検出できた。特に,脂肪蓄積関連形質および脂肪酸組成に関しては,効果の大きなQTLが検出されたことから,近傍領域についてファインマッピングを行った。その結果,レプチン受容体(LEPR)遺伝子および脂肪酸不飽和化酵素(SCD)遺伝子が各形質の候補遺伝子として検出された。これらのことから,純粋種内でQTLを探索するにあたっては,系統造成集団が効果的であることが示唆される。また得られたQTLは,純粋種内で分離していることから,直接家畜改良に応用可能であることが期待される。

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