日本養豚学会誌
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原著
ブタ肉中のイノシン酸含量におよぼす筋肉型の影響
千国 幸一佐々木 啓介本山 三知代中島 郁世尾嶋 孝一大江 美香室谷 進
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2013 年 50 巻 1 号 p. 8-14

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抄録

核酸関連物質は食肉のフレーバー形成において重要な役割を果たしている。速筋や遅筋といった筋肉型の違いが食肉中に存在する核酸関連物質の量と構成に影響を与えているかを明らかにするため,筋肉型の異なるブタ筋肉で核酸関連物質の含量を測定した。生体重 80 kg および 110 kg のブタ各 4頭より,と畜後7日目の咬筋(遅筋),横隔膜(遅筋),半棘筋(遅筋),大腰筋(速筋),胸最長筋(速筋),半腱様筋(速筋)の一部を採取し,凍結保存後に分析を行った。ELISA によって測定した遅筋型ミオシン重鎖アイソフォームの割合は体重間で有意差がなく,その値は横隔膜,半棘筋,咬筋,大腰筋,胸最長筋,半腱様筋の順で 56.1,51.5,39.7,24.0,10.2,7.8%であった。イノシン酸(IMP)の含量は速筋型筋肉で有意に高く,その含量は胸最長筋,大腰筋,半腱様筋,半棘筋,咬筋,横隔膜の順で5.28,4.99,4.83,3.28,2.28,2.07 μmol/g であった。また,ATP 分解物質の総量も速筋型筋肉で多く,最終pH は遅筋型筋肉が高い値を示した。これらのことは,死後硬直時に起きる生化学的な ATP 分解反応が筋肉型によって異なり,結果として IMP の含量に違いが生じたことを示唆している。

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© 2013 日本養豚学会
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