日本養豚学会誌
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原著
バークシャー種における自然発情下での経腟採卵条件の検討
生駒 エレナ鈴木 千恵石原 康弘小村 喜久男大小田 勉丸野 弘幸
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2014 年 51 巻 2 号 p. 45-53

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抄録

経腟採卵法は,同一個体から反復して非外科的に採卵することが可能な技術で,牛では既に高能力雌牛からの後継牛生産に応用されており,その手法もほぼ確立されつつあるが,豚での報告はほとんどない。そこで,本試験では豚の経腟採卵法による効率的な卵胞卵子の回収を目的に,適切な吸引圧および発情周期について調べた。はじめに,卵胞液を吸引する際の吸引圧について60,90,120 mmHg(mm 区)で検討したところ,1頭当たりの平均採卵数はそれぞれ5.3,7.1,5.8個/頭で有意差は認められなかったが,卵丘細胞が2層以上付着し卵子細胞質が均一な卵丘卵子複合体(Aランク卵子)の割合は,120 mm 区と比較して90 mm 区で有意に高い値を示した(60,90,120 mm 区;12.5%,27.2%,5.2%,P<0.01)のに対し,卵丘細胞が完全に剥離した裸化卵子(Dランク卵子)に関しては120 mm 区と比較して90 mm 区で有意に低かった(60,90,120 mm区;56.3%,36.0%,60.3%,P<0.01)。次に,発情周期の影響について検討するために,発情終了後2-5,6-10,11-16日(日区)(発情終了日を0日と設定)で比較したが,1頭あたりの平均採卵数および卵丘細胞の付着状況に有意差は認められなかった。得られた卵子に関しては,体外成熟・体外受精・体外発生培養を行い,発情周期ごとの採卵数あたりの分割率,胚盤胞発生率について検討したところ,すべての発情周期において胚盤胞にまで発生し,分割率および胚盤胞発生率は各発情周期間において有意な差は認められなかった。以上の結果から,自然発情下のバークシャー種を用いた経腟採卵法では,90 mmHg の吸引圧で卵丘細胞の付着状況が良好な卵子を効率的に回収できることが確認できた。また得られた卵子から胚盤胞を作出でき,豚においても経腟採卵法の利用により胚生産が可能なことが示唆された。

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© 2014 日本養豚学会
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