日本養豚学会誌
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原著
種豚から個体ごとに採取した胚盤胞期および拡張胚盤胞期ガラス化保存胚の胚移植による子豚生産効率
大曲 秀明三角 浩司宮下 美保永渕 成樹御澤 弘靖山下 祥子星 宏良平山 祐理吉岡 耕治
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2015 年 52 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

養豚において繁殖用として用いる種豚の導入は,一般的には外部の種豚生産農場からの生体(豚個体)の移動により行われている。本研究は,種豚導入におけるコストおよび病原体汚染などのリスクを低減することが可能な,胚の輸送と胚移植を活用した方法に代替するためのシステムの構築を目的とした。(独)家畜改良センター(福島県)でデュロック種豚から採取した胚盤胞期胚ならびに拡張胚盤胞期胚を,液体窒素に直接接触することなしにガラス化保存する微量空気冷却(MVAC)法によりガラス化保存し,液体窒素保管容器に入れて佐賀県畜産試験場に輸送した。胚のガラス化保存液(6.0 Mエチレングリコール,0.6 Mトレハロースおよび2% (w/v)ポリエチレングリコールを添加)および加温·希釈液(1.8 Mエチレングリコールおよび0.3 Mトレハロースを添加)の基礎培地として,20 mM Hepesで緩衝したブタ培養胚培養用培地(porcine zygote medium-5,PZM-5)あるいはブタ後期胚培養用培地(porcine blastocyst medium,PBM)を用いた。加温後の胚は外科的に移植し,移植成績を調査した。PBMを用いて拡張胚盤胞期の胚をガラス化保存した場合,一腹産子数(5.3±0.9頭)および移植胚数に対する産子数の割合として求めた子豚生産効率(35.6%)はPZM-5 (2.7±0.3頭および14.8%)に比べ有意に向上した(P<0.05)。このことからMVAC法によるガラス化保存液の基礎培地としてPBMが優れていることが示された。一方で,胚盤胞期胚における子豚生産効率(14.3%)は拡張胚盤胞期胚に比べ有意に低かった(P<0.05)。しかしながら,胚盤胞期胚は拡張胚盤胞期胚より厚い透明帯に囲まれており,ガラス化保存処理の際に透明帯が損傷する恐れが少ないと考えられる。そのため,疾病伝播のリスク低減を考慮すると,種豚導入および生産において,胚移植に胚盤胞期胚を利用することも有用であると考えられた。

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