日本養豚学会誌
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原著
慣行肥育とトコトリエノール高含有飼料用米「オオナリ」給与肥育における豚肉質の保存性の比較
中島 郁世佐々木 啓介青沼 達也成田 卓美渡邊 源哉本山 三知代八日市屋 敏之斎藤 真二山口 弘道草 佳那子木村 俊之
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2020 年 57 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

肉豚飼料へのビタミンE (VE)添加が,豚肉の鮮度保持に有効であることは知られている。本研究では平成29年に品種登録された飼料用米品種「オオナリ」に着目し,まず始めに標準米食用品種と比べて「オオナリ」のVE含量が高く,VE同族体の中でもγ-トコトリエノール(T3)を多く含むT3高含有米であることを確認した。次いで,肥育後期の肉豚45頭にこの「オオナリ」玄米(T3米)をトウモロコシの20% (20%区)および45% (45%区)代替した配合飼料を出荷前約2ヶ月間給与し,生産された豚肉の保存試験を行うことで,一般的なトウモロコシ主体の指定配合飼料で肥育された豚肉(慣行区)との肉質を比較した。小売店を模して胸最長筋の肉片(4cm×4 cm×2cm)をと畜後4日目から6日間LED照明下,4℃条件にて展示保存試験に供した。保存日数に伴い胸最長筋の肉質には変化が見られ,明度(L*値)と黄色度(b*値)が低下する一方で,赤色度(a*値),ドリップロスおよび脂質過酸化物(TBARS)濃度は上昇した。慣行区の豚肉に比べ,T3米給与豚肉のドリップロスとTBARS濃度は有意に低かった。また,T3米給与区の剪断力価は慣行区のそれよりも低値となった。更にT3米給与区の胸最長筋は,タンパク質含量が低い代わりに脂肪含量は高い傾向を示した。T3米給与の影響は胸最長筋および脂肪組織の脂肪酸組成にも認められ,皮下と筋間脂肪では慣行区に比べミリスチン酸とリノール酸の割合が低く,パルミチン酸,パルミトレイン酸およびオレイン酸割合は高くなった。胸最長筋においてもT3米給与によりリノール酸割合が減少した。T3米20%区と45%区の肉質に大きな違いは見られなかった。以上の結果,T3高含有飼料用米「オオナリ」を肥育後期の肉豚に給与することで,保存に伴う肉質劣化の低減や脂肪質を制御できる可能性が示唆された。

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