日本養豚研究会誌
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極度の高温感作が豚に及ぼす影響
1) 生理反応について
鎌田 寿彦中村 孝野附 巌森田 琢磨
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1986 年 23 巻 4 号 p. 173-178

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抄録

夏季における豚の熱射病に対する知見を得るために, 供試時体重が45~48kgの去勢豚を環境制御室内に収容し気温を時間経過とともに上昇して生理反応を測定した。1頭目の豚には33℃から37℃までの変化を3日半, 2頭目の豚には1頭目の豚の感作に加えて更に49℃までの変化を計4日半, 3頭目の豚には10℃以上環境温度を急激に上昇して41℃に4時間感作させ, 感作中の心拍数, 呼吸数および直腸温を測定した。その結果, いずれの生理反応も気温の上昇に伴って増加または上昇した。心拍数は気温41℃以上で増加した。呼吸数と直腸温の増加, 上昇は気温とより密接な関係にあり, この生理反応の増加, 上昇の程度は気温が徐々に上昇した場合には気温40℃近辺までは変化が緩やかであった。呼吸数と直腸温の最高値はいずれも3頭目の豚で観察され気温41℃下でそれぞれ230回/分, 42.8℃であった。また, 2頭目の豚でも気温が49℃になった時に42.8℃の直腸温が記録された。観察された呼吸数の最高値はこれまでの32~34℃における報告に比べると非常に多く, このことは気温40℃近辺でも豚が呼吸数を増加して高温に耐える能力を有していることを示しており, 心拍数と直腸温の結果もこれを裏付けている。また, 測定を終えて環境制御室から出した時にいずれの豚もかなりの抵抗力を残していたことを考え合わせると, 気温の単一要因のみであれば我が国において夏季に経験される程度の高温には豚が耐え得ると思われた。

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