1992 年 29 巻 2 号 p. 70-76
肉豚の発育に伴う脂肪畜積が性と体の部位の違いによりどのように異なるかを明らかにし, さらに枝肉横断面脂肪面積割合から枝肉脂肪割合を推定する方法を検討した。供試豚は系統間三元交雑豚LWD種38頭 (去勢雄19頭, 雌19頭) を用いた。体重が30, 45, 60, 75, 90, 105, 120kgの時点で2~3頭の去勢雄と雌をと殺した。枝肉右半丸の胸椎と腰椎の各椎節ごとに体長軸に沿って直角に横断し, 各切断面の脂肪面積割合をデジタイザーを用いて測定した。枝肉脂肪面積割合は, 体重60kg前後から去勢雄が雌より増加した。発育初期 (45kg) では胸椎後部~腰椎前部 (第12胸椎~第3腰椎) で去勢雄が雌より多く脂肪を蓄積し, 発育中期 (60, 75kg) ではこれらと胸椎前部~中間部 (第1胸椎~第11胸椎) で, さらに発育後期 (90, 105, 120kg) では, 腰椎後部も加わり全部位で去勢雄が雌より脂肪を多く蓄積した。いずれの発育時期, 部位においても最も脂肪面積割合が多いのは皮下脂肪であり, 次に筋間脂肪, 腹側部脂肪の順であった。そして, 発育に伴い去勢雄は雌よりも中躯から肩にかけての筋間脂肪, 腰の皮下, 筋間脂肪において多く脂肪を蓄積した。去勢雄では5つの横断面脂肪面積割合 (第1, 第7, 第9, 第12, 第13胸椎) と枝肉右半丸重量を説明変数として寄与率99.25%, 雌では3つの横断面脂肪面積割合 (第8, 第15, 第16胸椎) と枝肉右半丸重量を説明変数として寄与率93.19%で枝肉脂肪割合が推定された。