日本養豚学会誌
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豚の娩出促進に対するカルベトシンの臨床試験成績
田浦 保穂増山 龍一宮本 忠吉武 信野口 道修保田 昌宏村田 智昭宇根 智中市 統三中間 實徳山本 浩三中村 敏
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1992 年 29 巻 4 号 p. 200-204

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抄録

中規模養豚場で1990年9~11月に分娩した母豚のうち93例について, 分娩開始時刻 (第一子) を記録し, 産子のたびに, その時刻や体重を記録した。供試母豚は次子娩出までの間隔が30分以上となったものを対象とし, その時点で, 陣痛促進剤としてオキシトシン25単位 (Oxy 25), カルベトシン (Car; 長時間作用型オキシトン類似体) 0.4mg, 0.2mg, 0.1mgのいずれかを筋注し, 以下の結果が得られた.
1. 分娩間隔が30分以上の発生率は非常に高く, 約50%に及び, Car群全て1回注射により, 全例が30分以内に分娩を再開したのに対して, Oxy群では, 10例中4例 (40%) において, 2回注射が必要であった。
2. Oxy群では投与前の子豚1頭当たりの分娩所要時間が平均30.7分, 投与後22.8分となり, 投与を100とした場合, 74となり約25%短縮されたが, 投与前後間での有意差は認められなかった. これに対して, Car群では0.4mg群において48.8分が19.7分に, 0.2mg群では34.8分が9.8分に, また0.1mg群でも34.0分が11.2分に短縮され, 同様に投与前を100とした場合には, 40, 28, 33となり, Car全群がOxy群よりも有意に短縮した。しかもOxy群では認められなかった投与前後間の有意な短縮がCar群全てにおいて認められた。
3. 母豚当たりの死産の発生率は, Oxy群60.0%と最も多く, 次にCar 0.4mg群, Car 0.2mg群, 無処置群, Car 0.1mg群の順であった。子豚当たりの死産の発生率は, 母豚のそれと同様な傾向であった。
4. 分娩後7~21日にかけての子豚の1日の増体量では, Car群の方がOxy群よりも増体が良い傾向であった。
5. 分娩後7日目と21日目の子豚の育成率では, 無処置群が92.7%と最も高く, 次にCar 0.2mg群, Car 0.1mg群, Oxy群, Car 0.4mg群の順であった。

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