1992 年 29 巻 4 号 p. 211-217
種豚の改良には正確な育種価の予測に基づく選抜計画が必要であり, 集団の遺伝的改良量を常に把握することが重要となる。本研究は, 著者らが開発した選抜システムを導入している種豚生産農家の種豚群における発育形質と背脂肪厚の育種価をアニマルモデルによって予測し. 集団の遺伝的趨勢を比較検討した。
分析材料は, 群馬県の種豚生産農家の一農場で1985年6月から1990年7月までに生産されたデュロック種の子豚8,859頭の検定記録と, これらの記録をもたない親集団324頭の合計9,183頭を供試した。分析対象形質として105kg体重到達日齢 (DAY) と背脂肪厚 (BF) の2形質を分析した。アニマルモデルで取り上げた要因は, 母数効果として子豚の生年, 性および近交係数に対する回帰係数, 変量効果として分娩腹, 腹内の個体の枝分かれ効果である。
混合モデル方程式は SOR (successive overrelaxation) 法による反復法で解を求めたが, そのときの反復回数はDAYで359回, BFで238回であった。
DAYの遺伝的趨勢は, 1985年から1990年までの年次変化で-7.4日と大幅に減少し, 遺伝的な改良度の大きいことが認められた。BFについては, 1989年の-0.35mmが最も大きな値であったが, 全体としては大きな変化は認められず, 僅かに薄く改良されている程度であった。この結果は, 背脂肪厚に対して厚過ぎても薄過ぎても市場価値が低下するという日本の事情を反映したものと推察された。