日本養豚学会誌
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豚肉風味関連物質の含量に対する加熱処理の影響
千国 幸一佐々木 啓介江森 格岩木 史之谷 史雄中島 郁世室谷 進三津本 充
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2002 年 39 巻 3 号 p. 191-199

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抄録

豚肉の風味 (味・香り) 形成に関連する成分について, 加熱処理がそれらの含量に与える影響を検討した。デュロック種 (D), ランドレース種 (L), 梅山豚種 (M) 各8頭の胸最長筋から小片を採取し, 真空包装後70℃1時間の加熱を行った。加熱前と加熱後に含量を測定し, それらの相関や品種間差について解析した。総遊離アミノ酸含量は生肉で8.72μmole/g, 加熱後はやや減少して6.92μmole/gとなった。遊離グルタミン酸も同様に減少し, 生肉の0.44μmole/gが加熱によって0.36μmole/gとなった。有意な品種間差は総遊離アミノ酸含量で認められ, 生肉でD>L>M, 加熱肉でD>L, M (P<0.05) であった。一方, 遊離グルタミン酸含量に有意な品種間差は認められなかった。生肉と加熱肉で測定値間の相関係数を見ると, アミノ酸総量はr=0.76, グルタミン酸含量はr=0.59と有意な相関関係 (P<0.01) が認められた。約28%の加熱損失があったこと, および大部分のアミノ酸は水可溶性であることを考え合わせると, 含量の減少はドリップへの溶出によるものであり, 豚肉の遊離アミノ酸はこの程度の加熱によってほとんど変化していないと考えられた。オリゴペプチドは加熱によってやや増加し, 2.31μmole/gが2.55μmole/gとなった。オリゴペプチド含量の品種間差は加熱肉にのみ認められ (L, M>D:P<0.05), 相関係数は r=0.79と比較的高い値 (P<0.01) であった。イノシン一りん酸 (IMP) は生肉で3.94μmole/g, 加熱肉でやや減少し, 3.35μmole/gとなった。IMP含量に有意な品種間差はなく, 生肉と加熱肉の相関係数は低いもののr=0.43と有意 (P<0.05) であった。チオバルビツール酸反応物質 (TBARS) は加熱によって大きく増加し, 生肉の0.48n mole/gが加熱肉では10.02n mole/gとなった。TBARS値の有意な品種間差は加熱肉にのみあり (D>L, M:P<0.05), その値は品種の平均値で15.17 (D), 9.54 (L), 5.35 (M) n mole/gとかなり大きな差異を示した。TBARS値の生肉と加熱肉の相関係数はr=0.04と全く関連が認められなかった。以上のことは, TBARSで示される脂質の分解産物が加熱による風味形成の主体であり, また, 品種や個体による風味の違いの原因となることを示唆している。また, このTBARS値の加熱変化は生肉のTABRS値から予測することができないものであった。

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