有機合成化学協会誌
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シアノアミノ炭酸誘導体に関する合成的研究 (第4報)
シアナミド誘導体に関する研究 (第93報)
巣山 隆之大戸 敬二郎
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1975 年 33 巻 2 号 p. 136-140

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抄録

前報ではメチルメルカプトカルボニルシアナミド (MCC) に対する求核試薬の反応を検討したが, ここでは特にMCC自体の示す反応ならびにその関連化合物の化学的性状について検討した。
MCCは結晶状態あるいはエーテル溶媒中では二量体1-シアノ-1, 3-ジ- (メチルメルカプトカルボニル) -グアニジン (d-MCC) を生成する。これに対してアセトン溶媒中あるいは加熱時においてはジ- (メチルメルカプトカルボニル) -シアナミド (1) が主生成物となることを見出した。
ここに得られたd-MCCは特異な反応性を示すことを明らかにした。すなわちd-MCCはそれ自体を水中で加熱すると1-シアノ-3-メチルメルカプトカルボニル-グアニジン (4) を生成する。一方酸加水分解ではメチルメルカプトカルボニル尿素 (3) と1-カルバモイル-3-メチルメルカプトカルボニル-グアニジン (2) 塩となり, 塩基の存在下では単量体MCCに解離する。さらにd-MCCは加熱により容易にその転位生成物である1-シアノ-3, 3-ジ- (メチルメルカプトカルボニル) -グアニジン (5) となることを認めた。 (5) も液性により著しく異なる反応を示し, 酸加水分解では (2) 塩を, また塩基の存在下ではジ- (メチルメルカプトカルボニル) -アミド (6) とジシアンアミド (7) 塩に分解する。
以上MCCおよびその二量体d-MCCの反応性を検討するとともに, 上記諸反応の機構について考察を加えた。

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