有機合成化学協会誌
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Print ISSN : 0037-9980
有機合成化学
バイオメディカルサイエンスを支えるもの
早石 修
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43 巻 (1985) 11 号 p. 979

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抄録

生命現象の複雑なしくみを解きほぐし, さらにそれらの異常に基づく疾病の本質を理解して予防や治療を行うためには, きわめて基礎的な学問分野が大切であることは今さら贅言を要しない。例えば最近の分子生物学における画期的な進歩もDNAや蛋白質の構造解析や有機合成化学の新しい技術なくしては全く不可能であったことと思われる。また最近医薬品業界を賑わせているプロスタグランジンやロイコトリエンの研究もE.J.Coreyをはじめ各国の一流の有機合成化学者の貢献が主役を演じたことは多くの読者の記憶に新しいところであろう。
今後バイオサイエンスやバイオテクノロジーの急速な進歩に伴って, より複雑でより高次の生物の機能やその病態-例えば睡眠・記憶・感情などの高次の脳のはたらきや老化や癌など-の研究が盛んになることと期待されるが, これらの難問を解決するに当っては近年益々細分化する自然科学の多くの領域の学際的な協力が必要であり, 有機合成化学は依然として, その中でももっとも重要な役割を演じることは疑いをいれない。筆者は過去約2ケ年にわたって新技術開発事業団の新しいプロジェクトである創造科学技術推進事業の一環である「生物情報伝達プロジェクト」の総括責任者として, 多くの異なった専門領域の優秀な若手研究者と協同する機会に恵まれた。このような学際的な研究者の集団でもっとも大切なことは指導者の創造的意欲と能力はさておくとして, 各人が基本に忠実でそれぞれの領域において超一流の完成した研究者でなくても, 新しい事態に対応できるフレキシブルな研究態度をもっていることであると痛感した。今後バイオサイエンスに貢献されようと志されている若い有機合成の研究者に望みたいことは生半可な生物学の知識ではなくて, しつかりした基礎的な訓練と基本に忠実な実験態度, すなわち先ず第一に優れた有機合成化学者であり, さらに新しい未知の領域に挑戦し柔軟に対応できる研究態度をもつことである。

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© 社団法人 有機合成化学協会
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