有機合成化学協会誌
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新しいオレフィン環化反応剤水銀トリフラートアミン錯体
西沢 麦夫
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1986 年 44 巻 2 号 p. 160-164

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抄録

多くの炭素-炭素結合を一度に, 立体特異的に構築する多環性テルペン類の生合成反応は非常に合理的な化学変換である。酵素の助けを借りることなくこのような反応-生合成類似オレフィン環化反応-を高選択的に実現すれば, 強力な有機合成手段となりうる。Stork, Eschenmoserらの初期の研究に続いて, Johnson, van Tamelenらが多くの論文を発表しているが, 環化反応の行方を十分に制御するのは相当に困難で, いまだに好収率, 高選択的反応として定着したとはいい難い。
様々な方法が工夫されている中で, 水銀塩を用いる方法は安定な有機水銀化合物が単離できると同時に, この水銀を多様な官能基に変換できることから便利な方法であり, 主としてHg (OCOCF3) 2が用いられてきた。しかし, 筆者の意図した合成研究の過程で, この反応剤では納得のいく結果を得ることができず, 以下のようにその改良を試みた。
黄色酸化水銀のニトロメタン懸濁液に1当量の無水トリフルオロメタンスルホン酸を加えてかきまぜると, 黄色が徐々に消失してHg (OSO2CF3) 2が生成する。この白色懸濁液に1当量のアミンを加えると瞬時に淡黄色の透明溶液に変化する。Hg (OSO2CF3) 2・アミン錯体が生成したものと考えられる。この新しい反応剤は生合成類似オレフィン環化反応においてすぐれた特質を発揮し, この分野の有機合成に新しい展開をもたらした。本稿ではファルネソールおよびゲラニルゲラニオール誘導体に対して, 本反応剤を様々な条件下に反応させて得られた知見についてまとめる。
HgO+ (CF3SO2) 2O→Hg (OSO2CF3) 2
Amine→Hg (OSO2CF3) 2・Amine
1
nitromethane solution

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