有機合成化学協会誌
Online ISSN : 1883-6526
Print ISSN : 0037-9980
ISSN-L : 0037-9980
植物ホルモン
高橋 信孝山根 久和
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 46 巻 5 号 p. 436-446

詳細
抄録

本特集号に “植物生長ホルモン” について執筆を依頼されたが, この話題については “植物ホルモンとバイオサイエンス” が本誌に掲載されておりまた多くの総説, 成書も公表されている。本稿においては, これらと重複をなるべく避ける方向で解説を試みたいと考えている。
いわゆる種子植物は, 種子の発芽から始まって, 茎葉, 根の分化, それらの伸長, 花芽分化, 開花, 受精, 種子の成熟などの様々な素過程から構成される生活環を有している。これら素過程の発現は, 光, 温度, 水分, 栄養などの外的環境要因および内生の機能物質によって巧みに調節されている。この機能物質の主要なものが植物生長ホルモンである。植物の生活環の調節機構の解明は, 生命現象の本質をつく重要な研究課題であり, この研究を進めるには, 機能物質の単離, 化学構造の決定などの天然物化学的手法, 作用発現機構や生合成, 代謝などを追究する生化学的, 生理学的さらには分子生物学的手法を巧みに組み合わせることが必要となる。また, これら研究からえられる知見は, 農業という, 植物を用いる物質生産の場で, その生産性を高める技術の開発に利用されることが期待される。
本稿においては, 先ず, 植物ホルモンの総括的な解説と, 最近, 第6番目の植物ホルモンに位置づけられようとしているブラシノステロイド類と, シダ植物における造精器誘導物質について解説を行う。

著者関連情報
© 社団法人 有機合成化学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top