日本惑星科学会誌遊星人
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核合成起源同位体二分性と初期太陽系の進化
深井 稜汰
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2020 年 29 巻 1 号 p. 14-21

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抄録

太陽系の進化過程を考える上で,惑星形成以前の情報は不可欠である.コンドライト隕石は,原始太陽系星雲の物理化学過程を記録した未分化な隕石である.コンドライト隕石の全岩組成には,核合成起源の同位体異常が見られる.この同位体異常は,太陽系形成以前に作られたプレソーラー粒子が原始太陽系星雲で時空間的に不均質分布していたことに由来する.近年,炭素質コンドライトのTi・Cr・Sr・Mo・Nd同位体組成は,エンスタタイトコンドライト・普通コンドライト・その他の分化隕石の同位体組成と異なっていることがわかった.この結果は,原始太陽系星雲の内側・外側領域に,同位体二分性が存在していたことを示唆する.二分された領域の同位体組成の違いを説明するには,木星コアによる原始太陽系星雲の空間的な分断が必要という解釈が主流になっている.本論文は同位体二分性を主なトピックとし,同位体組成の違いを生んだ物質・元素間の傾向の違いなどを総合的に議論する.

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