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原稿種別: 表紙
2016 年 37 巻 p.
Cover1-
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
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2016 年 37 巻 p.
App1-
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
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2016 年 37 巻 p.
i-iv
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
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縣 拓充, 伊藤 葉子, 岩田 美保, 神野 真吾
2016 年 37 巻 p.
1-11
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本研究では,近年注目を集めている「持続可能な開発のための教育(ESD)」の中にアートや体験型の活動を位置づけ,それらの実践を評価するための「想像力」や「感性」を捉える指標の検討を行った。はじめに芸術教育の専門家へのインタビュー回答等を整理し,4つのカテゴリから構成される「持続可能な社会のための想像・表現コンピテンシー」(CCS)を抽出した。さらに,大学生及び高校生に対して質問紙調査を実施し,尺度の妥当性の検証を行った。本研究が一つの契機となって,教育目標として設定されながらほとんど客観的に評価・議論されることのなかった想像力や感性等に関わる指標の検討が進み,それらの育成のための実践的・理論的知見が精緻化されることが期待される。
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図画工作の年間指導の実施調査から
阿部 宏行
2016 年 37 巻 p.
13-22
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本研究は,子どもの絵の発達と,その指導のあり方を考えるものである。これまでに美術教育学会誌(以下学会誌)第35号と第36号において小学校6年間を継続的に調査した「食事の風景」をもとにして大人の絵に近づく子どもの絵の空間の表現は,様々な方向からの視点でかかれた観面混合などを繰り返しながら発達していくことを記述した。本稿では,現状把握のため平成27年3月に札幌市内203校の全小学校に年間に指導した教科書題材の実施調査を依頼し,約24%の48校から回答を得た。その調査結果から,従前から続く指導観や作品主義などの実態を顕在化させ,子どもの絵の発達と新しい学力観のもとの「子ども観」を踏まえた指導のあり方について論述した。
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創造美育運動に関する研究( 2 )
新井 哲夫
2016 年 37 巻 p.
23-37
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本稿の目的は,創造美育運動を戦前・戦後の連続性,非連続性の視点から捉え直すことによって,戦後日本の美術教育に多大なインパクトを与えた要因を探ることにある。そのため,創造美育運動内部および伝統的な美術教育との対外的な関連の二つの視点から戦前・戦後の連続性,非連続性を検証した。それにより,1創造美育運動には戦前・戦後に連続性があること,2創造美育運動の児童画評価は「教育評価」というより「コンクール評価」であり,戦前からの児童画コンクールの審査と連続性があること,3同時に,創造美育運動の児童画評価は,造形的な問題よりも絵に向かう子どもの態度や姿勢を重視する点で従来の児童画審査とは非連続的であること,4創造美育運動の方針やスタイルは従来の伝統的な教育研究と非連続的であること,5創造美育運動の歴史や伝統に対する非連続性が戦後美術教育にインパクトを与えた要因であったこと等を明らかにした。
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小学生の仏像様式の感受の変容
有田 洋子
2016 年 37 巻 p.
39-47
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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本稿は,小学生1-6年生における仏像様式感情感受の変容をSD法による調査から明らかにした。横断的に各学年の仏像様式感情感受の変容の過程を検討した結果,次のことが明らかとなった。1.変容の程度は別として,学年の上昇に伴って仏像様式の感受はより明確になっていく。2.小学4年生で,仏像様式感受は大きく変容する。3.小学1-3年生では,どの様式の仏像も似たような感受内容となる。4.小学4-6年生では,それぞれの仏像様式の感情を感受する。
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SD 法を用いた印象評価の比較から
有原 穂波, 萩生田 伸子, 小澤 基弘, 八桁 健
2016 年 37 巻 p.
49-59
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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本稿では,図画工作科における評価のあり方を考える糸口として,児童の描いた絵について学生・教員を対象に実施したSD法を用いたアンケート調査の分析・比較を試みた。分析には因子分析,回帰分析,各絵のプロフィールの比較を行い,学生・教員等の評価の偏りやそれらの差異について検討した。その結果,専門教科に関わらず学生同士は似通った評価を行うが,学生・教員間では評価の差が大きくなっていることがわかった。また,学生は新奇性の高い表現がされている絵に対して教員より好意的であり,教員は丁寧な筆致で描かれている絵を高く評価する傾向があることうかがえた。
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造形活動における QOL 向上のための授業改善の方策
池田 吏志
2016 年 37 巻 p.
61-73
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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本研究の目的は,重度・重複障害児のQOL(QualityofLife)を高める造形活動の授業改善の方策を示すことである。本研究では,仮説版の授業改善モデルを設定し,特別支援学校の重複学級でアクション・リサーチを実施した。ミックス法による量的データと質的データの分析の結果,授業改善モデルには一定の有効性が認められた。また,本研究では4種類の質的データを分析し,実践場面で活用可能な指標である授業改善フローチャート,及び重度・重複障害児のQOL向上に繋がる省察や新たな活動展開を考案,創造するための授業改善チェックリストを開発した。
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日本と中国の花鳥・山水画を事例として
池永 真義
2016 年 37 巻 p.
75-90
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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フリー
本研究では,大学の様々な専門領域で試みられているESP(目的別英語)アプローチが鑑賞教育法として応用できることを示すため,英語を自由に使えないがゆえに生じる英語の象徴機能が「思考の手段」となり,効果的な美術鑑賞学習が可能になるのではないかとの仮説を立てた。次に研究方法として,中学生を対象に日本・中国の山水・花鳥画を教材とする鑑賞文作成の実践を通して,仮説を検証することを試みた。その結果,英語の象徴機能による学習上の有効性が一定認められ,中学校段階でESPの応用による鑑賞教育法の開発をすすめる指針が得られた。ただしその有効性をより高めるには,生徒の鑑賞力・英語力に応じた指導上の要件を十分に満たす必要があることも課題として明らかになった。
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茨城県水戸市でのアクションリサーチをふまえて
市川 寛也
2016 年 37 巻 p.
91-104
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本稿は,放課後子ども教室事業における多様な活動の選択肢としてアート活動を導入する枠組みを構築することを目的とするものである。はじめに,事業の背景を辿るため,戦後の放課後支援策の変遷を概観する。特に,福祉行政と教育行政という二つの軸を示すことで,今日的な課題の所在を明らかにした。後半部では,3年間にわたる水戸市との協働事業を踏まえたアクションリサーチを行った。その結果,従来の校庭開放型からの転回を図る必要性が明らかにされた。しかし,現状として自治体がその企画立案を担うことは困難である。そこで,プログラムの構想段階においてコーディネーターとしての役割を担う外部の組織・個人が,担当部局との協働を進めていく手法の有効性を示すことができた。
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井上 朋子, 初田 隆, 木下 千代
2016 年 37 巻 p.
105-117
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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本研究は,総合的・領域横断的な芸術教育に関する教員研修プログラムの開発を目的としている。本稿は,2014年度投稿論文1)の成果を踏まえ,2日間(12時間)にわたる「教員研修プログラム」を作成し,大学院生16名を対象に試行実施した結果を考察したものである。プログラムの試行実施前,実施後の受講者のテストを比較,分析した結果,受講者の指導技術や表現技術の向上,そして総合的な芸術教育に関する意識変化等を明らかにすることができた。そのことによって,今後教員対象の研修を実施することの意義や今後の課題を確認するとともに,プログラムの内容および,研修会の運営方法の妥当性を検証した。
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小学生の3Dアニメーション制作過程にみる協同的な学び
上山 浩
2016 年 37 巻 p.
119-131
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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本稿は,美術教育における協同学習の機能を活かした表現指導についての一連の研究の一部である。特に本稿は,美術教育における協同学習について前稿までに示した基礎理解を前提として,筆者が小学生を対象とした協同学習としてデザインし実施した3Dアニメーション制作の教育活動を振り返り,その考察を通して,美術教育における協同学習としての表現活動の理解を掘り下げようとするものである。本稿では,協同学習による3DCG表現活動において,意欲,充実感,学習内容の充実に影響する要素として,たずねる-教わる-実感する-他者に教える-新たにたずねるの連鎖,教えたことが有効に機能していることの実感,教え・教えられた相手からの率直な評価等の重要性を指摘することができた。
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宮武辰夫の方法論の系譜とその意義
大須賀 隆子
2016 年 37 巻 p.
133-147
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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宮武辰夫(1892-1960)は,戦前は原始民族芸術探究家として活躍し,戦後は幼年美術教育実践家として創造美育の幼児部門に多大な影響を与えた。全身を投入したスクリブルを存分に体験することが子ども本来の造形表現を育むことを多くの実践事例によって示した。宮武が提唱した「全身のスクリブル」の源流を辿ると,「現代美術の父」ポール・セザンヌ(1839-1906)に行き着く。文明批評家グレツィンゲル(1902-1965)は著書KINDER KRITZELN ZEICHNEN MALENの中で,幼児期の造形表現は五官と呼吸を通した全身的体験であり,セザンヌは子どものように自己自身と自然の根源的なものに浸るところから創造しようとしたと論じた。現象学者メルロ=ポンティ(1908-1961)は,セザンヌを梃子にして絵画と身体と世界の関係を論じた。宮武の「全身のスクリブル」の意義は,20世紀の文明が攪乱しようとした「存在の根そのもの」「感覚の源泉」から湧き上がる造形表現力を子どもに回復させ育てようとしたところにある。
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教師のパフォーマンスに着目した授業改善システムの構築に向けて
大西 洋史
2016 年 37 巻 p.
149-160
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本研究は,図画工作科の授業における教師のパフォーマンスを分析することを通して,その構造や特性を明らかにするものである。前研究で導出した教師のパフォーマンスを構成する8項目を用いて,2人の教師が行った授業を比較し教師のパフォーマンスの表出の特徴を明確にした。さらに,教師の発話や行為といったパフォーマンスの様相を詳細に分析記述し,8項目との関わりを考察した。また,8項目による授業分析から教師のパフォーマンスの様相を分析する研究方法を確立し,教師の自己省察に役立つ新たなシステムが構築できる可能性を示した。
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導入時の援助の方略とその意図の分析を通して
大橋 麻里子
2016 年 37 巻 p.
161-177
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本研究は,幼児の生活画の活動導入時に焦点を当て,保育者の援助の方略とその意図を分析することを目的とした。幼稚園・幼保園で生活画の活動を参与観察し,収集したデータを基にカテゴリー化した。その上で,保育者の援助の方略の詳細と意図について,事例を基に分析した。分析の結果,導入時の保育者の援助には,先行研究で指摘されていた「イメージの想起」の他に,「体験の意識化・共有の促進」「描画による体験の主体化」「具体化への方略」「具体的な注意事項の確認」等,多様な方略が用いられていることが明らかになった。本研究で示した知見は,生活画の活動導入時における保育者の援助の方略の指標となると同時に,慣習化した生活画の活動のあり方を見直し,子ども主体の生活画の活動へ繋がるものと考える。
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祭壇画鑑賞の一提案
岡田 匡史
2016 年 37 巻 p.
179-194
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本稿眼目は,読解的鑑賞メソッドの拡充と更新である。当活動を推進し得る鑑賞対象として,イタリア美術,と言っても過去関連論文で扱ったルネサンス期絵画でなく,17世紀バロック期幕開けに多大な貢献を果たしたカラヴァッジョに注目し,サン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂コンタレッリ礼拝堂に現存する聖マタイ三部作から「聖マタイの召命」を選び,鑑賞題材化の観点からの本作の考察に最も比重を掛けた。読解の前提となるテキストとイメージの関係も多視点から検討を加え,特に今回は「美術を通した国際理解」なる柱も立て,この観点からの題材検討も進めた。研究方法的には,執筆準備段階で,『ArtEducation』誌連載資料から読解的鑑賞と関連するものを探して読み,そこから得た着眼点・思考法・展開方略等を基に,「聖マタイの召命」に合うよう6段階鑑賞法を再編して示した。新規提起事項として,ロールプレイや臨地鑑賞の意義(方法の提案も含む)も述べた。
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小田 久美子
2016 年 37 巻 p.
195-205
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
子どもの造形的な躓きに対する困難な諸問題への具体的対応として,芸術作品を幼年造形教育に取り入れることは,就学後の美術教育との接続の観点からも有益であると考え,その可能性を論ずる。まず,子どもの絵画的表象の発達を,「図式獲得と抑制」の見地から整理する。次に,芸術領域を臨床応用した環境として,絵画的表象の活性化を目指した二つの刺激の有効性について考察する。一つ目は芸術作品の一部の輪郭線を用いた視覚的刺激,二つ目は作品の鑑賞を行うことによる言語的刺激である。言語的・視覚的刺激をうまく取り入れることで,図画工作科へのスムーズな接続が期待される幼児造形教育論を展開したい。
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「無規定的過程概念」,その他
金子 一夫
2016 年 37 巻 p.
207-218
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
筆者は学校美術教育の現象を考察して,その実質は現在性ではなく超越的な外部への志向が生成する過程であること,そして関連する六つの結論を得た。1.学校美術教育は現在的自己を保証すると同時に,超越性から生成される「無規定的過程」である。2.自分と隔絶した非対称的他者が,教育効果をもつことがある。3.美術作品は外部から贈与交換サイクルに与えられ,鑑賞教育もこのサイクルに児童生徒を参入する過程である。4.美術教育に関連する子どもの成長は,確固たる過程としての論理をもつ。5.自己外部の隔絶性への受容的姿勢は「視る」ではなく「聴く」比喩となる。
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評価を中心に
小池 研二
2016 年 37 巻 p.
219-231
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本論は2014年に行われた国際バカロレア中等課程プログラム(IBMYP)の改訂についての続編である。前回の論文では探究学習,概念学習,文脈による学びなどの特色が,より一層明快になったこと,小中高の各プログラム間の連続性がさらに強まったこと等がわかった。本論では評価を中心に見たところ,評価規準が各学年とも全て公表されたこと,4つの評価規準の点数が統一されたこと,授業や評価をする上で必要な用語を指示用語として統一し意味も明確化したことなどから評価の面でも導入のしやすさが,はかられたことがわかった。また,単元指導案を日本の教科書題材を基に作成し検討することにより,MYPの単元での学ぶべき内容や評価について検討した。さらに改定後の評価規準と日本の評価の観点を比較検討した。これらのことから日本の1条校でもMYPの導入がさらに容易になったことが確認できた。
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美術鑑賞授業のパフォーマンス評価に関する質的分析を通して
佐藤 絵里子
2016 年 37 巻 p.
233-245
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本研究は,美術科の題材ルーブリックを作成するパフォーマンス評価の協議会において,評価者の相互作用を通して,質的言語表現が展開されてゆく過程を明らかにしたものである。その際,パフォーマンス評価の過程における言語活動は一種の「教育批評」であるという仮説に基づき,戈木版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた質的調査を実施した。その結果,上記の過程では,暗喩の使用を通して教育目標の再構築が行われる場合があることが明らかとなった。美術教師は「教育批評」的言語表現を用いることによって,新たな教育的価値を創出・発信する契機を得ることができる。
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日本的なものの見方「観る」に着目して
佐藤 基樹, 幸 秀樹
2016 年 37 巻 p.
247-256
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本稿は,「見る」という行為に着目し,西洋と日本の「見る」を比較しながら,日本の「見る」の特徴を明らかにするものである。始めに,ルネサンス期から抽象表現主義までの西洋画家たちの「見る」の変遷を追いながら西洋の「見る」を考察した。次に,仏教の「観る」をもとに日本画家たちの対象への迫り方を分析し,日本の「見る」を考察した。結果として,日本の「見る」は,内的真実を追求する点が強いことが明らかになった。そこで,日本の「観る」という概念を意識した美術教育を行えば,児童生徒は内的真実を追求することになり,より一層対象を鋭く観察する力や物事の本質を探ろうとする態度が身に付くのではないかと考え,「“観”を促す水墨表現」という方法の展開を提案する。
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床の間に陶芸作品と絵画を飾るイメージで
髙橋 文子
2016 年 37 巻 p.
257-268
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
中学校美術科第3学年の陶芸について,制作及び鑑賞プログラム開発を行った。大胆で動的な桃山茶陶に着目して玉づくりによる碗作品を制作し,それらの陶芸の作品鑑賞において,床の間を想定して絵画と合わせて場を構成し,そのマッチングを検討する協働的な作品鑑賞を試みた。同一の陶芸作品であるにもかかわらず,合わせる絵画によって,作品の見え方が変化することは驚きであった。生徒がそれらの微細な感受やマッチングを話し合うことで,より陶芸作品のもち味を感じ取り,感性を働かせる鑑賞活動が創出された。本稿では,特にその協働的な「場を構成する」作品鑑賞を取り上げ,その教育的有効性を実証する。
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京都府内女学校への出講と教科書作成の状況を中心に
竹内 晋平
2016 年 37 巻 p.
269-285
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
京都府画学校関係者は明治期の学校教育,特に毛筆画教育に関与していた。本研究は,画学校関係者による女学校への関与の傾向とその意義を明らかにすることを目的としている。先行研究や行政文書等の史料をもとにした京都府内女学校図画教員の概観からは,画学校関係者による毛筆画教育への顕著な関与,および出講状況に画塾における師弟関係が影響した様子を確認した。また,画学校関係者作成の図画教科書の採用状況に関して師弟関係からの影響はみられなかったが,京都市内のみでの採用に限られていることが明らかとなった。以上から画学校関係者による女学校への関与には,明治中・後期の京都市内「洛中」地域を中心として展開した,伝統文化に根差す自律的・協働的な教育動向としての意義があったと結論した。
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鑑賞能力と身体感覚・触覚的物質感把握力の働きを見据えて
立原 慶一
2016 年 37 巻 p.
287-299
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
『影(蘇州上空にて)』の鑑賞において,美的特性感受の低回数組に属する生徒はモチーフ・情景の性格づけ(表情性)から「河の流速感」「街並みの密集感」「機上運行感」を感知した。また彼らが『オヴェールの展望』の鑑賞で,描写・彩色法の造形的特徴から身体感覚及び触覚的物質感を感受する割合は,極めて高いことが分かった。両作品を対比鑑賞させることによって,鑑賞能力をも含む広義の直観的把握力におけるアウトロー的だが,無視できない局面が明るみに出た。本稿ではその能力を新たに概念化し,直観的把握力全体の中に位置づけることができた。
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鑑賞授業の提案,実践を通して
田中 幸子
2016 年 37 巻 p.
301-313
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本稿は拙論『映画と芸術教育の接近(1)』に続く実践報告である。高校の芸術教育での映画作品の鑑賞の教育的意義を明らかにし,検討・作成した授業案をもとに,実践した内容を考察する。授業は,映像・映画史入門パートと鑑賞・分析パートで構成される。考察では,二つの仮説を検証するために,分析パートで実施した生徒たちのスケッチと文章記述を比較データとした。仮説は,(A)鑑賞及び分析を通して語彙は拡大する,(B)鑑賞及び分析を通して着眼点の多様化・拡大が見られるとした。映像用語の活用が見られるか,自らの美意識によって作品の全体から一部を選び出しその表現について制作者の意図・映像表現技法・鑑賞者側へ与える印象や影響について記述をしているか,という点を前・中・後期で比較する。
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「図工・美術実態把握アンケート」と意見交流型勉強会の実践から
寺元 幸仁
2016 年 37 巻 p.
315-328
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
図工・美術教育について考える時,多くの場合,都市部の教育現場を想定して語られてはいないだろうか。「鑑賞」教育を例に挙げると,美術館と連携をとった取り組みは多く報告されているが,山間部においては連携を取る美術館などの施設がない場合も少なくない。本研究では,兵庫県S市を中心に行った「教師と学生対象図工・美術実態把握アンケート」から,山間部における図工・美術教育の教育環境及び教師の意識に関る課題を明らかにした。同時に,これまでも指摘されてきた図工・美術軽視と教師が抱える図工・美術教育に対する不安や疑問について示した。それらの課題の解消に向けた勉強会の実践から,受け身的な講義型や演習型ではなく,教師が主体的に意見を交流し合う形の勉強会の有効性と必要性を明らかにした。
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イメージと造形記号の関係に焦点をあてて
新野 貴則
2016 年 37 巻 p.
329-340
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本論は,子供の創造的な表現活動の構造を明らかにすることが目的である。まずは,子供の表現活動を何らかのイメージを造形記号に表す活動としてとらえ,鬼丸吉弘の描画の発達段階論を読み直した。その上で,アンリ・ベルクソンのイメージに関する理論に基づいてイメージを造形記号に表す論理を構築した。この論理から,子供が創造的な表現活動を実現するためには,二重の努力が必要であると結論付けた。一つは,思いや感覚の深みへ飛び込み,身を任せることによって複雑なイメージを形成することであり,もう一つは,試行錯誤しながら徐々にイメージを造形記号に表していくことである。
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関係性の構築を目指した協同制作による物語の表現活動を通して
春野 修二, 笠原 広一
2016 年 37 巻 p.
341-360
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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フリー
多様な解釈や展開が可能なことを前提として,ワークショップには一般的に「参加」,「体験」,「グループ(協同)」といったキーワードのもと,教師の指示で何かを教えられるのではなく,ファシリテーターの案内で主体的に活動に参加し,参加者同士の交流を通して協同でアイデアを出し合い創造体験をするといった特徴がある。「グループ(協同)」の視点から共同制作に関しては,平成元年以前の美術科学習指導要領における指示型分業作業ではなく,それ以後の主体型協同活動の在り方にワークショップの理念との共通性を見出した。本研究は,コミュニティ形成を目的とするワークショップの傾向を踏まえ,プロセスの活性化を意識した協同的な表現活動を通して人と人の関係性を構築するあり方に着目し,中学校美術科教育におけるワークショップを実践した。具体的には,協同制作による物語表現の表出において,情動の交流「力動感」をもとにして,考えや価値を分かち合い「感性的コミュニケーション」,互いの繋がりを実感できる「繋合希求性」を満たした実践になったことを検証した。
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高等師範学校附属小学校の手工科教員による提案から
平野 英史
2016 年 37 巻 p.
361-374
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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小論の目的は,昭和初期の小学校手工科における実践内容の多様性を明らかにすることである。研究の方法は,高等師範学校および女子高等師範学校附属小学校の手工科教員が提案したカリキュラムの分析を起点とした。そして,文部省の教授要目との関係性,カリキュラムの最初と最後に課された授業,知識・技術の習得の手立て,教材および題材の質と量の関係,などに焦点を当てることで進めた。研究の結果,明らかになったことは,各実践者の持つ手工観(工業・美術・工作・表現・遊びなど)がカリキュラムの編成,特に題材設定や教授法に大きな影響を及ぼしていたということであった。
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六本木アートナイト2015ガイドボランティア養成の実践
平野 智紀, 会田 大也
2016 年 37 巻 p.
375-386
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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本研究では,六本木アートナイト2015をフィールドに,大都市型アートプロジェクトに「地域」という文脈を付与したガイドボランティア養成プログラムの成果を明らかにすることを目的とする。これまでアートプロジェクトにおいて,「地域」の視点と「アート」の視点はともすればコンフリクトを起こしうるものであった。本研究では対話型鑑賞のトレーニング手法を用いてこれにアプローチする。対話型鑑賞は美術鑑賞教育実践であると同時に,関係性の中から価値を見出すリレーショナルアートの実践でもある。養成プログラムを通してガイドボランティアは,六本木という「地域」について理解するとともに,対話型鑑賞の方法論を学び,「(リレーショナル)アート」に関する理解を深めることができていたことが示唆された。
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藤原 智也
2016 年 37 巻 p.
387-400
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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本論文では,現代の美術科教育制度が,新自由主義社会構造改革を進めるポスト・デモクラシー下で,その教育-学習の機会保障問題に直面しているとの認識から,その正統性を問題にするために,再帰性の概念を手がかりに次の検討を行った。まず,美術科教育学,美術科教育イデオロギー,美術科教育制度がそれぞれ自明にしている諸前提を明らかにした。次に,教育-学習の機会保障を行う公的な学校教育としての美術科教育が,立憲主義下での憲法的要請に基づいているという前提に遡り,自由権と社会権の観点から教科主義と子ども中心主義について原理的分析を行った。その上で,これらが社会から脱文脈化された学校システムであるという限界を指摘し,社会へ再文脈化する美術科教育再編の社会・政治的意義を示した。
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ムスリムの教師たちとの対話をめぐって
箕輪 佳奈恵
2016 年 37 巻 p.
401-413
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本論文は,イスラム世界における美術教育と宗教との関係性について,ムスリムの教師による授業実践の観察と彼らへのインタビューを通して明らかにするものである。調査中の授業実践からは宗教的要素は顕在化しなかったが,教師たちと重ねた対話から,彼らの実践する美術教育には,表現への配慮を要するという従来のイスラム世界の美術教育における消極的な認識だけではなく,宗教との関連を肯定的に捉える側面が存在するという事実が浮かび上がってきた。彼らは,一見イスラムとは無関係に思える事柄について,信仰と美術教育とのつながりを見出し,実践に価値を与えていたのである。この研究結果は,イスラム文化に即した美術教育の発展の基盤となる,新たな知見を提示するものである。
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村田 透
2016 年 37 巻 p.
415-428
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本研究の目的は,幼児期の子どもの造形表現過程の具体性を明らかにすることである。そのため筆者は,子ども(4歳児と5歳児)を対象とした「造形遊び」を実践し,関与観察とエピソード記述を用いて分析・考察した。明らかになったことの1つ目は,造形表現行為を通して,子どもは身の周りの環境にかかわり,自分にとっての固有のものやことの意味をつくり,自分のアイデンティティをつくり出していたということである。2つ目は,子どもの表現行為は,多様な特徴(「材料遊び」「操作遊び」「構成遊び」「模倣遊び」など)がある〈いま-ここ〉によって成り立ち,それらが入れ替わり立ち代わり生じるということである。3つ目は,子どもの表現行為の過程は,多様な特徴がある〈いま-ここ〉の表現が,次の〈いま-ここ〉の表現を誘発して,表現過程に連続性や発展性が生じる場合もあるということである。
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プロジェクト型保育の実践から
森 文乃
2016 年 37 巻 p.
429-440
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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幼児はどのような過程を経て自分らしい表現を生み出すのか。本研究は,幼児の作品制作過程のパターンを提示した。子どもの生活と造形表現のつながりや主体性を重視していることから,よりその子らしい表現が生まれると考えられるプロジェクト型保育の事例から分析した。その子らしい表現が生まれるプロセスを8つのパターンに分類した。プロセスにおける重要な要素として,生活の経験・環境・材料がある。心が動かされる生活の経験は,その時の場面や気持ちを,制作時,子どもに思い起こさせる。また制作時に環境と関わることでイメージが湧いたり,最初のイメージが変容したりする。特に物的環境に含まれる材料は,それ自体を造形に使うことができ,子どもが関わることで行為がうまれ,造形表現へとつながることがある。これら要素が関わり合うことで,その子だけのイメージを生みだし,独自の色や形が生まれる。
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八桁 健, 萩生田 伸子, 小澤 基弘, 有原 穂波
2016 年 37 巻 p.
441-451
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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本研究は,小学校朝活動での継続的な描画と省察の往還が,児童の心的な発達や成長,そしてその創造性育成にどのように寄与するのかについて,長期的・多角的に検討するものである。本稿では,本活動を実施している2校の小学校において,年度始めと年度終わりの計2回実施したアンケートを統計分析することにより,現時点での本活動の効果について量的検証を行った。また,両小学校教諭から直接感想を聞き取ることにより,本活動における児童の表現に対する意識の変化について質的検証を行った。これら量的検証と質的検証を併せ考察を行った結果,本活動の効果が最終的に「各教科に求められる表現力の育成」,「コミュニケーション能力の活性化」へと結びつくのではないかとの仮説を再認識することができた。
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大正期における教育計画と手工科加設に関する考察
鷲山 靖
2016 年 37 巻 p.
453-464
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
本論は,広島高等師範学校附属中学校における手工科教育の研究にあたり,大正期広島高等師範学校附属中学校の教育計画と手工科加設に関して考察するものである。関係文献を調査した結果,大正期広島高等師範学校附属中学校における第一部制度は手工科加設の起因となり,広島高等師範学校・広島高等師範学校附属中学校・広島高等師範学校附属小学校の教員による図画手工科研究会や兼任体制によって,手工科教育カリキュラムの開発がおこなわれ,手工科の加設が維持されたことが明らかとなった。また,大正期における手工科教育カリキュラム変遷の大枠,手工科教育に携わった11名の教員氏名が判明した。
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2016 年 37 巻 p.
465-476
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
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2016 年 37 巻 p.
478-479
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
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2016 年 37 巻 p.
480-482
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
フリー
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2016 年 37 巻 p.
484
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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2016 年 37 巻 p.
485-487
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
ジャーナル
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2016 年 37 巻 p.
488-
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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2016 年 37 巻 p.
489-490
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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2016 年 37 巻 p.
491-
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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2016 年 37 巻 p.
App2-
発行日: 2016年
公開日: 2019/08/26
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