美術教育学:美術科教育学会誌
Online ISSN : 2424-2497
Print ISSN : 0917-771X
ISSN-L : 0917-771X
38 巻
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
  • 2017 年 38 巻 p. Cover1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. App1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. i-iv
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 学習指導要領と図画工作の教科書
    阿部 宏行
    2017 年 38 巻 p. 1-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,小学校学習指導要領図画工作の表現領域表現(1)「造形遊び」の現状について平成27年3月に札幌市内の小学校203校に対して調査を実施し約40校から回答を得た。1)その調査結果から,特に高学年の「造形遊び」の実施率が低迷している状況をとらえて,学習指導要領と図画工作の教科書(日本文教出版)の「造形遊び」の扱いに特化して考察した。平成10年の告示に新設された高学年の「造形遊び」が,子どもと対象の「関係性」に基づいていて,子どもが「状況」をとらえ,創造的な行為で「つくり・つくり変え・つくり続ける」ことを中心としていた。それが低・中学年との違いであり,その誤謬から起きた齟齬であったことを導き出した。
  • キャッチフレーズによる日本絵画様式の鑑賞
    有田 洋子
    2017 年 38 巻 p. 13-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本絵画の様式のキャッチフレーズ化による鑑賞教育方法の教育的可能性を実証した。1.江戸時代の絵師,光琳,応挙,蕪村,若冲の四様式を教材化する様式として選定した。2.美術史記述を踏まえ,四様式を「オシャレ光琳」「まじめ応挙」「おおらか蕪村」「エキセントリック若冲」とキャッチフレーズ化した。3.三段階構成により授業構想を行った。クイズ・カルタを取り入れることで,楽しみながら様式の感受・理解を定着・強化することをねらった。4.小学4年生,中学1・3年生を対象に,本稿筆者あるいは協力校教諭が授業者となって授業実践を行った結果,理解と楽しさの両面で本教材の教育的有効性が実証された。さらに,間違いやすい様式や作品の考察・分析も行った。また,作品と作家の人格の同一視が見られる場合があり,注意の必要を指摘した。
  • 生きづらさを抱える人の芸術表現に関する実践的研究( 2 )
    安藤 郁子
    2017 年 38 巻 p. 27-43
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,知的障害と精神障害の重複障害のある,31歳の男性Kと私との創作活動をフィールドにした,「表現すること」にある本質についての継続研究の一部である。Kと私という二人のあいだの相互作用的な関係性に着目し,生きづらさを抱えた一人の人と,そこに共にいることを試みた一人の人との相互行為の中でどのように芸術表現が立ち上がっていくのか,そのプロセスについて詳細に記述した。特に本稿では,一般的には問題行動とされるKの突発的な行動と芸術表現が共に起こる場で,表現者と共にいる私自身がどのようなことを経験し,どのようにつくりかえられたのかを明らかにした。
  • 池田 吏志, 児玉 真樹子, 髙橋 智子
    2017 年 38 巻 p. 45-59
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,全国の特別支援学校における美術の実施実態を調査し,今後改善すべき課題を明らかにすることである。調査では,分校を除く970校の各学部に在籍する美術の主任教員2909名を対象に質問紙を送付した。821名から返信があり,そのうち不備の無かった508名を分析対象とした。分析の結果,99%の特別支援学校・学部で美術の授業が実施され,週に平均1.83コマ(1コマの単位時間の平均は48.18分)の授業が行われていた。しかし,90%の教員は養成課程で障害のある子ども達を対象にした美術の指導に関する学習の機会を得ておらず,着任後の研修の機会もほとんどないことが明らかとなった。
  • 「個の想像的世界の形象化」の質的分析
    磯部 錦司
    2017 年 38 巻 p. 61-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,現代日本の生命哲学に見られる生命論と,現代芸術文化のエコロジーの思潮,及びポストモダンにおいて再考されるデューイの経験的自然主義の考えを理念とし,その考えに立った生命主義的自然観を基軸にした教育の「個の想像的世界の形象化」の段階における芸術の働きと内容を示すことを目的としている。そのプロセスの質的分析から,この段階が芸術の統合的,想像的機能が作用する段階にあることを検証し,1997年~2016年に調査及び参与観察において収集した事例の分析から,その表現内容の特徴が,物語性,再現性,自然との関係性,メッセージ性にあることを示した。そして,その段階ではコンテクストが形象化のプロセスにおいて統合し,芸術が自然及び生命に関わる新たな意味を生成し,自然や生命に対する見方や感じ方を拡張させていくことを示した。
  • 教師の〈意識-規範・文化〉をふまえて
    宇田 秀士
    2017 年 38 巻 p. 77-91
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,美術教育における「遊び」概念を対象とした。「遊び」概念が窺える関連著作,「遊び」を活かした実践の先達といえる乾一雄の構想と実践,大阪「Doの会」の構想と実践,文部省・文部科学省「造形遊び」の成立と展開,芸術概念の拡がりの中での教育実践の展開などの歴史的事象をタテ軸に,その背景にある社会的・文化的状況をヨコ軸にそれぞれおき,美術教育の実態における教師の〈意識-規範・文化〉をふまえて,メタ次元から構想し論じた。その結果,「遊び」概念の諸相を,斯界の教師の〈意識〉の基盤としての「自由への志向」,初等教育段階に適した様相を呈する「主体的な活動を生み出す内発的な動機づけ」,初等教育終盤から中等教育段階に一層適すると考えられる「芸術概念の拡がりがもたらす柔軟な思考への誘い」として示し,考察した。
  • 教員免許更新講習「図画工作・美術科の授業論」のプログラム開発とその実践
    大泉 義一
    2017 年 38 巻 p. 93-106
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,図画工作・美術科の授業における教師の発話に関する継続研究である。本研究においては,これまでの発話研究の知見から教員免許更新講習のプログラムを開発・実践し,発話研究の成果を教育実践に還元する方策について検討している。そして受講者に対する質問紙調査と記述物の分析から受講者にもたらされた効果に関する以下5つの要素を確認している。・授業実践のリフレクション・授業に対する見方・考え方の拡張・研修の機会における活用・授業研究方法の習得・学びの実証性これらが,教員研修プログラムの改善に寄与するものであるとともに,「第1・2・3教育言語」を教師が実践を通して自身の権威性と向き合うための手がかりとして位置付けることの有効性を明らかにしている。
  • 『信濃教育』掲載の石井鶴三言及記事の検討
    大島 賢一
    2017 年 38 巻 p. 107-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本論文は,1924年から教員講習会講師や児童展覧会の審査員などとして長野県の美術教育に指導的な立場から関わった彫刻家,石井鶴三について信濃教育会機関誌『信濃教育』掲載記事における言及を検討し,長野県の美術教育及び教育界全体において,どのような意味を持って受容されたかということの一端を明らかにするものである。本稿では,1)自由画教育運動以降の美術教育の展開の中で,石井による彫塑や絵画の講習会は,教師たちが本格的な美術にふれ,自己研鑽をする重要な機会として認められていたこと。2)石井の人格や所作が,美術教育に限らない,理想的な教育者像として語られていること。3)長野県ゆかりの文化人の顕彰事業に関わる中で,それらの人物に比肩する県内教育界にとって重要な人物として認識されていったことの3点が確認された。
  • 教師のパフォーマンスに着目した授業評価の一例
    大西 洋史
    2017 年 38 巻 p. 119-134
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,図画工作科の授業における教師のパフォーマンスに関する継続研究である。これまでに,パフォーマンスを構成する8つの要素を導出し,パフォーマンスを評価する方法や効果的なパフォーマンスを探る研究を行ってきた。今回の研究では,初任教員Aの4月から7月までの計4回にわたる図画工作科の授業を,パフォーマンスを窓口に評価した。またその内1回は,他2名の教員が実施した同一題材の授業とAの授業との違いについて比較考察を行った。その結果を受けて初任教員Aは,自らのパフォーマンス課題を把握し授業改善を進めることができた。以上から,パフォーマンスに着目した評価システムの効果を確認した。
  • 生活画の活動に焦点を当てて
    大橋 麻里子
    2017 年 38 巻 p. 135-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究では保育現場における生活画の活動を参与観察し,描画後の子どもと保育者の間に生じる「かかわり」の詳細を分析した。その結果,描画後のかかわりは,保育者と子どもが一対一で話す機会となっており,保育者は子どもとかかわる中で,「絵を描く動機となった子どもの体験」や「子ども自身」を受容していた。一方,描画後の子どもは,絵について保育者へ語る中で,自らの体験を整理し,深めていた。また描画後のかかわりは「保育者」と「自らの絵について語る子ども」だけでなく,「その周囲にいる子ども」との間にも生じていた。描画後の子どもと保育者がかかわる場が,その周囲にいる子どもの「他者の表現を尊重する基盤」を育み,「友達の絵の鑑賞」や「体験の共有」の契機となる様子が示唆された。
  • 授業検証を通じた観察,自由解釈,情報提供(知識補塡),ロールプレイ等の分析を中心に
    岡田 匡史
    2017 年 38 巻 p. 151-165
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    鑑賞対象に潜在する学習有効性の掘り起こし及び多角的検討が,現在取り組む読解的鑑賞研究の中心的課題となる。本稿もこの枠内に位置付けられ,カラヴァッジョ「聖マタイの召命」の前稿題材研究を基に行った,信州大学教育学部附属松本中学校3年C組での検証授業を分析した。特に本稿では知識不問との理由から導入を以前嫌った自由解釈に注目し,国語科教科書に載る鑑賞文執筆課題や自由解釈系譜のVTS・対話型鑑賞の検討も含む理論的考察とワークシート記述内容の解析の二本立てで自由解釈の有効性を調べ,国際理解的観点からも極めて高い意義・可能性が確認できた。その自由解釈と教師説明とが中身面白く密度濃ければ共存可能な点も実証できた。論争を背景とするマタイ特定作業やロールプレイの導入も前稿論察を受け補説し,「聖マタイの召命」を学習材に使う読解的鑑賞の具体的提示が進展できた。
  • 興福寺阿修羅像の鑑賞授業実践の分析から
    鬼澤 玲奈
    2017 年 38 巻 p. 167-178
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,興福寺阿修羅像の鑑賞教育事例を考察し,それを踏まえて仏像一般の鑑賞教育方法の体系を試みるものである。仏像がもつ性格を信仰対象,彫刻作品,文化財の三つに整理し,それらに基づく七つの類型に仏像鑑賞授業における目的,内容,方法と同像がもつ要素を分類した。そして同像鑑賞授業の三本の円柱型からなる構造を確認し,仏像鑑賞教育を体系化した。そしてそれに分析した実践事例を照らし合わせ,仏像鑑賞授業の構想及び分析における有効性を確認した。また,仏像鑑賞教育がもつ可能性として,極彩色の姿を扱う鑑賞授業,形相や持物の差異を扱う鑑賞授業,安置状況の差異を扱う鑑賞授業の形を提案した。現在の姿とは異なる造像当時の姿を授業において扱うことで,より広がりと深みをもつ鑑賞教育を実践することができる可能性を示した。
  • 贈与交換論による美術教育の再定義を通して
    金子 一夫
    2017 年 38 巻 p. 179-191
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    著者は今日の美術教育学研究における問題点を指摘し,その解決のため贈与交換論による美術教育学の再定義を提案した。論述を以下の三段階で行った。1.美術教育学の発生から現在に至る過程 2.美術教育学が本来備えるべき要件 3.美術教育学の問題とその解決方法の検討 1.で美術教育学の困難の外部的・内部的要因を指摘し,2.で美術教育学の要件は厳密な概念による美術教育現象の記述とした。3.で美術教育学の問題点として,主要な言説に1理論上の表現と学習と教育の区別がないこと,2理論上に表現者だけ存在し,教育内容,教師が存在しない不備を指摘した。その解決のため,教育,美術,美術教育を贈与交換の過程と再定義して,表現と学習と教育の区別,教育内容と教師の理論的再生を試みた。そして美術教育は教師,被教育者,教育内容・教材各々を下位要素システムとして交感するシステムと捉えられるとした。
  • 映像制作に関する教材開発と実践
    金城 満, 杉尾 幸司
    2017 年 38 巻 p. 193-204
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,映像制作を題材としたICT教材の開発と,それを活用した授業形態の組み合わせ効果に関する実践報告である。開発した教材は,ICTを活用する事により,映像制作に必要な知識技能を,過去の優れた生徒参考作品等をもとに段階を踏んで学べる等の特徴を持ち,多様な授業形態への活用が期待できる。この教材と,一斉,個別,グループ学習等の授業形態とを組み合わせた授業を実施し,生徒へのアンケート調査や複数教師による生徒の映像作品の評価等から,ICT活用と授業形態の組み合わせ効果を検証した。その結果,開発したICT教材は「協調学習」を主軸に,それらを補完する「反転授業」,「デザイン思考」等の授業形態との組み合わせによって効果を発揮することが明らかになった。
  • 空間図式を指標とした図像解釈の試行実践
    栗山 裕至
    2017 年 38 巻 p. 205-212
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    青年期の絵画作品を分析対象とし,心理検査法の一つであるバウム・テストの解釈に用いられる空間図式による図像解釈や構図・構成の分析を行い,さらにインタビューを通した検証を行った。制作時の調査対象者の精神状況が空間構成に特徴的に反映していることが確認され,作者の意識のあり方と画面空間構成との関係を読み解く手がかりとして,空間図式が有効である可能性を示すことができた。
  • DP 美術科のねらい,目標,シラバスを中心に
    小池 研二
    2017 年 38 巻 p. 213-224
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本論の目的は,国際バカロレア・ディプロマプログラム(IBDP)美術科について,1教科のねらいやシラバス等の概要を文献調査等から明らかにする,2改訂後の中等教育プログラムMYPと比較して相違点,類似点を挙げながら両者の特徴を明らかにする,3日本の学習指導要領の教科目標等と比較して,DPの特徴を明らかにする,ことである。調査の結果DP美術科は,改訂前と比較し,文脈,方法,コミュニケーションといったコア領域を具体的に示したこと,文脈による概念的な学習を行うMYPとの関連があること,学問分野として芸術を捉える面が日本の美術教育より強いことがわかった。創造性を大切にするDPの美術教育は,日本の美術教育と比較し方向性において大きなずれはないが,大学入学資格として厳格な評価内容等表面的には両者の違いは存在し,DPを参考にする場合は探究的な学びを行う等のDPの学びの本質を理解する必要がある。
  • 茨城県 K 市における中学生へのアンケート調査からの考察
    光山 明
    2017 年 38 巻 p. 225-239
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究プロジェクトは,小学校図画工作科と中学校美術科の接続性や連続性に着目し,小中連携による美術教育の可能性を検討するものである。研究成果の第1報となる本稿では,研究プロジェクトの全体像を示すと共に,図画工作科・美術科の実態分析から小中連携を目指す上での課題について考察した。茨城県K市の中学生3,337人に対するアンケート調査の分析からは,中学校1年生で美術科が好きな子どもの割合が増加する学校の存在や,美術科学習に期待する子どもの心理構造などが明らかになった。これらの結果を基に,小学校から中学校へと接続する時期における小中教員の指導意識のあり方など,カリキュラム改善に向けた課題について論じた。
  • 高校美術における黄金背景テンペラ制作の実践を通して
    斉藤 望
    2017 年 38 巻 p. 241-252
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は「黄金背景テンペラ」を高校美術での授業で取り上げることが可能かを検証し,教材としての可能性を明らかにすることを目的とした。高校2年生の授業展開をもとに実践した内容を考察する。古典画法による再現の学習を通して,観察し,分析し,用具材料を誂え,制作する。生徒は,この活動を繰り返しながら,制作を深めた。その結果,絵画制作のみならず,美術文化全般に対する生徒の興味・関心を掘り起こすことに有効であることが検証できた。同時に,学習指導要領を踏まえた絵画指導の新たな展開が期待できることを明らかにすることができた。
  • 美術鑑賞授業のパフォーマンス評価に関する質的分析を通して( 2 )
    佐藤 絵里子
    2017 年 38 巻 p. 253-265
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,美術科の題材ルーブリックを作成するパフォーマンス評価の協議会において,評価者=教師の相互作用を通して「教育的価値」に関する合意が形成されてゆくプロセスを解明したものである。その際,「教育的価値」の概念に接近するため,アメリカのマックフィー,アイスナーの論考を参照した。また,教師間の相互作用にとって決定的役割を果たす「他性」に注目し,バイテルの研究に基づきその重要性を論じた。さらに,戈木版GTAによる質的分析を行った結果,上記の過程では比較的高次の合意が形成され,批評の内的一貫性が担保される傾向にあることが明らかとなった。今後,教師の友愛的精神とデューイ的民主主義を通して「教育的価値」の生成の場が拡大されてゆくことが期待される。
  • 絵画の時間・学びの時間
    鷹木 朗
    2017 年 38 巻 p. 267-282
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本稿では,最初に,描く行為性の観点からモダニズム絵画の終焉とそれ以降の今日的状況について考察する。続いて,和歌山大学美術教育研究会の題材開発研究より示唆を得たモンドリアン及びマティスの表現分析を行う。ここでは,描くことをドローイングとペインティングという二つの行為概念から探りたい。その上で,筆者自身が過去に行った大学教育における絵画制作の授業実践を報告し,先の考察と照らし合わせ,絵画を描く主体が身体を通して画面そして世界へと関わる「出来事」として捉える。最後に,今日求められる絵画教育として,これらの手掛かりを基に初等・中等教育の現場へと一般化し授業題材化していく展望を示したい。
  • 髙橋 慧
    2017 年 38 巻 p. 283-295
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本論は,保育における造形と音楽を結び付けた表現活動について考察するものである。岡山県内の公立・私立幼稚園171園から回収した質問紙調査のデータを基に,保育者が考案した284件の実践案を精査した。その結果,13の造形側の活動と7つの音楽側の活動が,多様に結び付いて展開されること,造形活動は実践の到達点となるのが一般的であること,音楽活動に歌詞を伴うかどうかで活動の内容と回答数に違いが生じることが明らかになった。また,造形と音楽を結び付けた表現に対する意欲を指す「表現意欲」や,造形活動単独に対する実践上の自信を数値化した「造形自信度」が,実践案を考案できるかどうかに関連していることが,量的分析により示された。
  • 愛媛県手工教育史(第二報)
    髙橋 敏之
    2017 年 38 巻 p. 297-312
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本論は,1886(明治19)年頃から1907(明治40)年頃までの22年間を対象期間として,愛媛教育協会機関誌に見られる手工教育関係記事の調査から,愛媛県の尋常小学校及び高等小学校における手工科の成立及び展開過程を探った。その結果,愛媛教育協会が,中央及び全国の手工教育の動向を注視しつつ,手工教育の普及に取り組んでいた実態が明らかになった。特に,上原六四郎や岡山秀吉の学説や見解を基に,手工教育理論の普及と平行して,愛媛県の地域の実情等を考慮しながら,授業実践への具体化等を模索していたことが明確になった。一方で手工科が,実業教育科目か普通教育科目かで,教育関係者が動揺する様子が見られたが,最終的には,普通教育科目としての性格付けで決着した。
  • 児童の形状ストックという観点から
    髙橋 文子
    2017 年 38 巻 p. 313-326
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    小学生及び幼児を対象に,美術作品を記憶して描くことによる教育的効果を,形状ストックという観点から検討した。美術作品を見た後,作品を見ないで描く記憶画と,作品を見ながら描く観察画の2枚のスケッチを描写するプログラムを,4歳~12歳児を対象に行った。形状ストックという事物レベルで描かれた物を比較することで,児童の認識,感受の様子をリアルに検討することが可能であった。記憶スケッチには,児童のもつ絵画意識が強く反映されていた。記憶スケッチプログラムは,形や色,印象等の感覚の精度を高め,より質の高い認識や感受を生み出すことを確認した。
  • 『玉泉習画帖』に掲載されたモチーフの意味
    竹内 晋平
    2017 年 38 巻 p. 327-341
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本画家・望月玉泉によって明治期の京都で刊行された毛筆画教科書『玉泉習画帖』に掲載されたモチーフには,画技に関する教育意図のほかにどのような意味が含まれているのかについて明らかにすることにある。このため,江戸中期・後期の円山四条派,および明治期の京都府画学校関係者による先行作例と『玉泉習画帖』との比較を行った。その結果,両者の間にはモチーフ選択,画面における構図,写生の重視,運筆の傾向等,図様に多くの共通性があることが認められた。このような流派をこえた『玉泉習画帖』への影響は,図様だけでなくモチーフに込められた寓意にもおよんでおり,それは宗教的な世界観,そして俳諧を中心とした文学性に根差した美意識であると解釈された。
  • 田中 さや花, 西口 雄基, 前田 基成
    2017 年 38 巻 p. 343-352
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,なぜ同じ絵画を鑑賞しても人によって作品の印象や視点が異なるのかを,認知的特性の1つである自閉症スペクトラム傾向に注目し,その個人差が絵画の鑑賞にどのような影響を与えるのか検討するものである。予備調査,本調査ともに1枚の絵画を鑑賞してもらい,質問紙に回答を求め絵画の印象や見方を調査した。その結果,自閉症スペクトラム傾向の強い・弱いで作品の印象や視点に個人差が生じることがわかった。例えば,調査で使用した絵画は怪しげな視線のやり取りが描かれていたが,自閉症スペクトラム傾向が弱い人ほど,この視線のやり取りによる不穏な空気に悪い印象を受けるが,自閉症スペクトラム傾向が強い人ほど悪い印象を受けることはないことが推察された。
  • 社会的自尊感情重視の教育現場から
    寺元 幸仁
    2017 年 38 巻 p. 353-363
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    児童画コンクールの影響について,先行研究ではプラスとマイナスの両面について論じられている。しかし,教育現場ではプラス面が強調されることが多い。本研究では,近藤卓の論を援用し,子どもの「自尊感情」への影響について考察を行った。入賞等による社会的自尊感情の肥大化と,基本的自尊感情とのバランスの変化により,プラスの影響だけではなく,「落選時の自信喪失」「意欲減退」などのマイナスの影響も考えられることを示した。また,近藤が自尊感情の測定尺度として開発した「SOBA-SET」を用いて,実際に子どもの自尊感情を測定し,家庭環境などを含めた細かい考察を行った。外的な承認であっても社会的自尊感情を膨らませない場合や,優越感によって人間関係にマイナスの影響を及ぼす可能性について述べた。取り巻く環境によって影響は様々であり,児童画コンクールの影響についてとらえ直す必要がある事を示した。
  • 地域連携授業「日本茶大好き(ほうじ茶淹れ方体験と湯のみ茶碗づくり)」を事例に
    橋本 忠和
    2017 年 38 巻 p. 365-380
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    次期学習指導要領で「社会に開かれた教育課程」が注目されている。その実現にむけて教員養成大学の美術教育においても専門性を持つ人材等と連携・分担し課題解決ができるようになる学びを創造できる教師の育成が求められている。そこで本研究ではユーリア・エンゲストロームの「ノットワーキング」という活動理論に着目し,北海道教育大学函館校学生と公立小学校5年生の児童・保護者による連携授業「日本茶大好き」を事例に,その理論と美術教育との接点の分析と考察を行った。するとノットワーキング型美術教育は学生に教員としての力量と課題を自覚させるとともに,教職へのモチベーションを高めていた。また,その活動は児童・保護者にも地域文化への価値等を再発見・再構築する役割を有していることが見いだせた。
  • 初田 隆, 井上 朋子, 木下 千代
    2017 年 38 巻 p. 381-394
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、総合的・領域横断的な芸術教育の指導力育成を図るための研修モデルの開発を行うことである。そこで、現職教員を対象とした「教員研修プログラム」を実施し、その成果と課題を検討するとともに、プログラム受講生の中から3名の協力者を得、研修プログラムでの経験を生かした授業を構想・実施してもらうこととした。そして題材設定の趣旨や授業記録、児童の作品・コメント等から授業分析を行い、そのことによって、研修プログラムが受講者に及ぼした成果を検証した。結果、受講者の個別の課題意識を尊重しながらも、総合的・領域横断的な芸術教育の意義や価値の共有化が図れたという点でプログラムの成果を確認することができた。
  • 機関誌『教育研究』などを対象として
    平野 英史
    2017 年 38 巻 p. 395-407
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    小論は,大正後期から昭和初期において指導的立場にあった4校の高等師範学校附属小学校の手工科教員(伊藤信一郎,山形寛,横井曹一,大竹拙三)が,その機関誌において主張した教科観の推移から,当時の手工教育の実態を明らかにすることを目的とした。研究の結果,時代・制度・所属校などの特性から影響を受けつつも,子ども中心のカリキュラムを基調としながら,多様な教育思潮(労作教育,工業教育,実業教育,芸術教育,構成教育など)を摂取することで,その内容を教科の目的と方法とに複雑に引用しながら,各実践者固有の主張が展開されていたことが分かった。
  • 本間 美里, 松本 健義
    2017 年 38 巻 p. 409-426
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,美術館において作品を前にした鑑賞活動で起こる対話により,個々人の経験,語り,知覚が他者のそれらと連鎖して相互作用し,相互につくりかえられていく活動を分析記述することで,対話による鑑賞活動の過程と特性を明らかにすることを目的とする。作品の横に並んだり,真似をしたり,視線を向けたりするふるまいを見せながら,見えたこと,感じたこと,思いについて語ることや,他者のそれらを見て経験したり感じたりすることで,自他のあいだに作品が現象し,個々において経験,語り,知覚を新たに生起させていく。美術館での鑑賞活動は,作品を構成するものとものとの関係へ向かう身体的志向性と,テクストとしての作品の経験から触発される語りやふるまいが,〈経験-語り/ふるまい-知覚〉の連鎖として,個々人において,また自他間においても越境的に生成されている。
  • 牧野 由理
    2017 年 38 巻 p. 427-439
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本稿は明治初期に開設された島根県師範学校附属幼稚園(現・島根大学教育学部附属幼稚園)の図画教育について検討したものである。保姆による明治期の保育記録を読み解き,図画教育に関連する手本や絵画の分析を通して考察した。その結果,箸環排などの直線や曲線を用いた手技を関連させながら図画を行うことで輪郭線を理解させるような方法論をとっていたこと,談話や唱歌といった他の領域と画方を関連させようとしていたこと,浮世絵などの色鮮やかな図版を多数所有し,中には保姆による手描きの動物図・人物図が含まれていたことが明らかとなった。
  • モルディブ共和国の1984年ナショナルカリキュラムをもとに
    箕輪 佳奈恵
    2017 年 38 巻 p. 441-453
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本論文は,開発途上国の位置付けとしてのモルディブ共和国における美術教育のはじまりを,歴史的資料に基づいて解明するものである。モルディブ共和国では,同国初のナショナルカリキュラムが導入された1984年に,学校教育としての美術が始まった。その1984年版の美術カリキュラムを読み解くことによって,同国初期の美術教育が,「創造主義・子ども中心主義」的な絵画表現活動や特定の表現技法の習得を重視しており,諸外国における美術教育の影響が認められるものであった一方で,建材や身近な生活用品などのヤシを用いた伝統的造形の学習がその大きな位置を占める,現地における伝統文化の継承という役割を担うものでもあったという事実が明らかとなった。
  • オーストラリアにおける多文化主義政策の推移を基に
    柳沼 宏寿
    2017 年 38 巻 p. 455-464
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,多様化する社会における映像メディア表現の教育的価値を明らかにすることにある。多様化という課題については,先進国とも言えるオーストラリアに着目し,多文化主義政策の変遷を振り返りながら,現在,新自由主義の影響下でどのような課題を抱えているのかを明らかにするとともに,その克服へ向けての映像メディア表現の可能性に言及する。特に本論では,これまでの研究で明らかになった映像メディアのエンパワーメントとして機能する様相をマクルーハンのメディア論を援用しながら分析し,映像メディア独特の「学びの構造」を明示する。
  • ニュルンベルク・シュタイナー学校の実践を手がかりにして
    吉田 奈穂子
    2017 年 38 巻 p. 465-477
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,シュタイナー学校のエポック授業における造形活動がどのように他教科領域の授業に浸透しているのかを明らかにすることを目的としている。そのために,文献調査に加え,2014年9月から2015年7月までニュルンベルク・シュタイナー学校の教員養成課程に通い,講義・演習や観察実習,教育実習において収集した資料を参考に考察した。その結果,エポック授業における造形活動の浸透は,他教科領域とシュタイナー学校の目指すべき姿の育成とをつなぎ,社会の中で豊かに生きていくために必要な資質や能力を育てていた。そこから,今後の教員養成のあり方に関して,いわゆる主要科目と造形活動を含む芸術科目の複数の専門性を持った教員養成所の必要性を示唆することができた。
  • 若山 育代, 滝口 圭子
    2017 年 38 巻 p. 479-489
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,シンジとテツオという2名の男児を年長後期から小学校1年スタート期まで縦断的に追跡し,彼らの「造形活動に向かう態度」を事例的に明らかにした。方法としては,「態度」を構成する3つの要素の観点から子どもたちの造形活動を分析し,2児がどのような「造形活動に向かう態度」をもっているかを明らかにした。その結果,年長後期と小学校1年スタート期に子どもたちがもつ「造形活動に向かう態度」には,継続してみられるものと,小学校の文化の中で新たに形成されるものとがあることがわかった。この結果について,個人差に配慮した造形表現の発達とその連続性を保障するアプローチ及びスタートカリキュラムの編成の必要性と,さらなる個人差の解明の必要性を議論した。
  • 2つの探究による方法論について
    和田 学
    2017 年 38 巻 p. 491-498
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,21世紀の情報環境の特性を踏まえ,美術教育における質的探究のモデルを再考することにある。本研究は,探究学習のモデルの一例として,フェルドマン(EdmundFeldman)の批評プロセスに焦点をあて,彼の批評行為の実演部にみられる解釈を中心に考察する。本研究は,学習者が,2つの探究間に揺れ,質的ジレンマ(葛藤)学習を提案し,21世紀のメデイア環境の時代における批評教育としての意義を位置付ける。
  • 2017 年 38 巻 p. 499-510
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 512-513
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 514-516
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 517-518
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 519-521
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 522-
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 523-524
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 525-
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. 526-
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 38 巻 p. App2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
feedback
Top