日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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42 巻, 2 号
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  • 小針 大助, 小迫 孝実, 深澤 充, 塚田 英晴, 佐藤 衆介
    原稿種別: 本文
    2006 年 42 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    近年ドイツ語圏において家畜福祉を考慮した飼育環境総合評価基準として使用されているAnimal Needs Index (ANI)を用いて、条件の異なる放牧環境に対するANIの評価基準としての適性について検討した。EUのScientific Committee on Animal Health and Animal Welfare発行の「The welfare of cattle kept for beef production」におけるEUの農業地域を参考に選定した国内4ヵ所の放牧地について、ANI35L/2000-cattleを用いて放牧環境の評価・採点し、ANIによる評価の問題点を摘出した。査定に供した牧場は次のとおりであった。(1)秋田県K放牧地:日本短角種繁殖牛とその子牛約30組を約2,000haの山林で年間150〜180日、定置林間放牧。(2)岩手県O牧場:日本短角種及び黒毛和種繁殖牛約170頭を138haの草地で年間約250日、輪換放牧。(3)宮城県I牧場:黒毛和種繁殖牛85頭を約80haの草地で補助飼料給与しながら約250日、輪換放牧(妊娠中)、または時間制限定置放牧(分娩〜離乳)。(4)栃木県D牧区:乳用種去勢育成牛4頭を1haの草地で年間180日、輪換放牧。放牧関連項目の配点は-1〜16点で、ANI全評点の31.2%を占めていた。各牧場、放牧地の評点はそれぞれ(1)11点,(2)14.5点,(3)14点,(4)11.5点となった。全体的に放牧日数に偏重した査定項目となっており、評点には放牧期間の影響が大きく反映された。放牧環境条件の福祉性をより的確に評価するためには、地形や規模、植生など質的評価項目を加える必要があると考えられた。
  • 竹内 美智子, 森田 茂, 高橋 圭二, 干場 信司, 春田 哲平, 島田 泰平
    原稿種別: 本文
    2006 年 42 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    乳牛が最も時間を費やす維持行動は横臥行動であることから、休息場所である牛床が快適であることが必要である。本研究では、加速度計を用いた落下試験装置を試作し、酪農場における牛床資材および敷料の有無による牛床衝撃力の相違を検討した。調査は、AからFの酪農家6戸で実施した。A、BおよびC農家は繋ぎ飼い牛舎であり、D、EおよびF農家はフリーストール牛舎であった。牛床資材は一年使用した50mmのゴムマット(A,B)、25年使用した10mmのゴムマット(C)および数年間使用したゴムチップマットレス(D,E,F)であった。加速度計を埋め込んだ落下装置を牛床上に落下させ、加速度の変化から、初回衝撃力、2回目衝撃力および初回衝撃力に対する2回目衝撃力の割合(N_2/N_1比)を算出し、比較した。DおよびE農家の初回衝撃力はそれぞれ約2,400Nおよび約2,600Nであり、F農家の初回衝撃力は約4,200Nと極めて大きかった。AおよびB農家の初回衝撃力は約2,500Nであり、C農家の初回衝撃力は約6,500Nと非常に大きく、ゴムマットの薄さと使用年数により衝撃力が増加したものと考えられた。N_2/N_1比はゴムチップマットレスを使用していたD、EおよびF農家が、ゴムマットを使用していたA、BおよびC農家に比べ高い割合を示し、ゴムチップマットレスはゴムマットに比べ衝撃力の吸収性が高いことが示された。ゴムチップマットレスはゴムマットに比べ落下試験装置が衝突した際資材の変位量が大きく、その結果衝撃力吸収性が高くなったものと推察された。A、BおよびC農家において、初回衝撃力および2回目衝撃力は多量の麦稈を使用することにより減少した。C農家の初回衝撃力および2回目衝撃力はそれぞれ3,000Nおよび700Nに減少したが、どちらも変動係数は大きく、牛が牛床を利用した際に敷料が片寄り、衝撃力に差が出たものと考えられた。以上のことから、牛床の衝撃力および衝撃力の吸収性は牛床資材が同様であっても農家によって異なり、また敷料を用いることにより衝撃力は減少し、特に2回目衝撃力において減少効果が大きいことが示された。しかし、牛が利用する際に敷料の片寄りが出てしまい、常に敷料を片寄りのないよう管理することは困難であることから、衝撃力の大きい場合は、ゴムマットやゴムチップマットレスのような牛床に付属した資材の検討が重要になると考えられた。
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