日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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43 巻, 3 号
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  • 武井 直樹, 竹内 千晴, 渡辺 秀意, 井上 俊和, 藤田 優
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 3 号 p. 140-146
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    山羊直腸便より、乳酸菌と推定した桿菌24株と球菌65株を単離した。その桿菌(24)株中から、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性と発酵PHにより選択した2菌株を用いて乳酸菌発酵ミルクを作製し、山羊給与試験を実施した。選択した2菌株の乳酸菌種同定は、生化学的性状及び菌株の16S rDNAの500bp部分塩基配列と国際塩基配列データーベースの乳酸菌塩基配列の相同性比較結果から、Lactobacillus plantarum subsp. plantarumに属する菌株(Lactobacillus Plantarum subusp. Plantarum NLBC1(=JCM13898)、NLBC2(=JCM13899))と推定した。山羊給与試験は、給与群21.6±11.76月齢(n=5、平均値±SD)5頭、無給与群19.2±10.73月齢(n=5、平均値±SD)5頭を用い、給与群に乳酸菌数125×10^5/mlに調整した乳酸菌発酵ミルク60ml/頭,日を22日間給与した。その結果、給与群において顆粒球/リンパ球比の有意な増加(P<0.05)、血糖値量の有意な減少(P<0.O1)、斃死率の減少、糞便中大腸菌数の有意な減少(P<0.01)が見られたが、体重増加量等に有意差は認められなかった。以上の結果から、Lactobacillus Plantarum subusp. Plantarum NLBC1(=JCM13898)、NLBC2(=JCM13899)菌株を用いた乳酸菌発酵ミルク給与は、山羊に対し免疫力向上等の影響が期待されると考えられた。
  • 高橋 和裕, 中嶋 哲治, 谷原 礼諭, 橋本 和博, 渡邉 朋子
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    飼料タンクにおける家畜用配合飼料の貯蔵技術の改善を図ることを目的として、従来型の飼料タンク(以下、従来型タンク)と換気機能を有する飼料タンク(以下、換気式タンク)のそれぞれに配合飼料を貯蔵し、両タンク内の上部および中部の温度並びに湿度の変化について比較検討した。換気式タンクの最高温度は従来型タンクと比べ飼料タンク内上部で6.8℃、中部で5.7℃低かった。平均温度は従来型タンク上部で27.6℃、中部で25.8℃であったが、換気式タンクのそれらはそれぞれ25.9および24.8℃と有意に低下した(P<0.05)。換気式タンクの最高相対湿度も上部で10.0ポイント、中部で5.0ポイント低かった。平均相対湿度は従来型の飼料タンク上部で58.9%、中部で60.2%であったが、換気式タンクのそれらはそれぞれ53.5および58.2%と温度と同様に有意に低下した(P<0.05)。容積絶対湿度についても同様の低下がみられ、従来型タンクの上部で14.1g/m^3、中部で14.0g/m^3であったが、換気式タンクのそれらはそれぞれ12.3および13.1g/m^3と有意に低下した(P<0.05)。また、換気式タンクの上部の容積絶対湿度は、外湿度との間に有意差が認められなかった。このことは飼料タンク上部に設置した換気機能による効果と推察された。以上から、飼料タンク内の換気は配合飼料の貯蔵環境の改善に有効であることが示唆された。
  • 小木野 瑞奈, 植竹 勝治, 石渡 俊江, 松永 昌訓, 飯田 美季, 江口 祐輔, 田中 智夫
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 3 号 p. 154-163
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    搾乳牛における、ミネラルを含む固形塩を舐める行動(舐塩行動)について、その行動学的な意義を検討するとともに、生理学的な指標を用いての検討も合わせて行った。ホルスタイン種搾乳牛26〜30頭を、鉱塩を設置した処理群(分娩後170.3±95.4日、2.5±1.6産)と設置しない対照群(分娩後174.9±105.9日、2.5±1.3産)に分け、タイストールで2004年5〜9月の5ヵ月間飼育し、行動観察と頸静脈からの血液採取、採食量、舐塩量の測定を月に1回行った。行動観察は10分間隔の瞬間サンプリングで行い、舐塩行動については同時に連続観察を行った。処理群における舐塩量と舐塩回数の平均値は7月で最も多かった(それぞれ61.6±60.1g/日、39.9±40.9回/日)。日内の舐塩回数は給飼に伴って変化し、特に給飼後に集中していた。処理群個体の舐塩行動が盛んにみられた同時刻に対照群個体が行っていた行動としては、休息(44.9%)、採食(28.6%)、反芻(12.3%)の占める割合が多かった。舐塩回数が多いほど排泄回数が多く(r_s=0.37, P<0.05)、床の探査回数が多い傾向にあった(r_s=0.28, P=0.10)。乳量が少ないほど舐塩回数が多く(r_s=-0.36, P<0.05)、乳蛋白質率が高いほど舐塩回数が多かった(r_s=0.34, P<0.05)。また、血清IgM濃度が処理群で対照群よりも高く(P<0.05)、血清遊離脂肪酸濃度が処理群で対照群よりも低い傾向にあった(P<0.10)。舐塩行動以外の行動の生起頻度は群間で有意な差がみられなかった。以上より、搾乳牛において舐塩行動は、牛の生理的状態および管理作業(特に飼料給与)に反応することにより変化し、乳成分および血液成分の一部に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 石渡 俊江, 植竹 勝治, 江口 祐輔, 田中 智夫
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 3 号 p. 164-173
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    長距離輸送に対する牛のストレス抵抗性を調べるために2つの現地調査を行なった。初めに、哺乳・育成方式が異なる2軒の育成農家(農家IとII)で哺乳・育成された16頭の肥育素牛について調査した。育成期における累計作業時間は、農家I(48.8分/頭)よりも農家II(233.1分/頭)で長かったが、輸送後の生理反応における農家間の有意差はみられなかった。血清ALT濃度と心拍数は、農家Iでは輸送1週間後に比べ輸送直後に高かったが(ともにP<0.01)、農家IIでは差がなかった。育成期における牛への接触が伴う管理作業時間は、農家I(0.7分/頭)より農家II(2.9分/頭)で長かった。次に、人工哺乳と機械哺乳で育てられた肥育牛の輸送に伴う生理反応における違いを16頭の子牛について調査した。群飼で機械哺乳された子牛(321.4±22.9kg)は、単飼で人工哺乳された子牛(298.2±19.4kg)よりも体重が重かった(P<0.01)。育成期における牛への接触が伴う管理作業時間は、人工哺乳(0.7分/頭)より機械哺乳(23.7分/頭)で長かった。血清pHは、人工哺乳された子牛では、輸送1週間後に比べ輸送直後に低かったが(P<0.05)、機械哺乳された子牛では差がなかった。血清ALT濃度(P<0.01)と心拍数(P<0.05)は、人工哺乳された子牛で輸送1週間後に比べ輸送直後に高かったが、機械哺乳された子牛では差がなかった。以上の結果から、育成期に飼育者との接触がほとんどない飼育環境で育った子牛では、輸送へのストレス抵抗性が相対的に低いことが明らかになった。さらに哺乳期から子牛を群飼することで、新奇環境や馴染みのない牛に慣れやすくなることが示唆された。
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