日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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43 巻, 4 号
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  • 石渡 俊江, 植竹 勝治, 江口 祐輔, 田中 智夫
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 179-184
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、肉牛の屠殺時血液性状と肉質における夏季と冬季の違いを調査することであった。夏季(18.9〜28.4℃)に15頭、冬季(4.9〜7.0℃)に20頭をトラックで近くの屠場へ輸送した。牛は屠場の待機ペンで一晩休憩した後、1頭ずつ屠殺された。血漿コルチゾール濃度と血中グルコース濃度は、冬季より夏季に有意に高くなった(ともにP<0.01)。血清pHと血清総タンパク質濃度は、冬季より夏季に有意に低くなった(ともにP<0.01)。これらの結果から、夏季は牛にとってより過酷な状況であることが示唆された。その主な原因としては、屠殺前に一晩中絶水されたことが考えられた。血清遊離脂肪酸濃度は、夏季より冬季に有意に高くなった(P<0.01)。血清ASTと血清ALTの活性は、夏季より冬季に有意に高くなった(ともにP<0.05)。冬季にみられたこれらの生理反応は、屠殺前に一晩中絶食されたことによると考えられた。しかし、これらの生理反応は肉質に影響するほどではなかった。さらに、人による牛の扱いにも季節による違いがみられなかった。本研究の結果から、屠殺前に一晩、完全に絶水することは家畜福祉的見地からも避けるべきであると考えられた。
  • 出口 善隆, 東山 由美, 成田 大展, 梨木 守, 川崎 光代, 荒川 亜矢子, 平田 統一
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 185-191
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    耕作放棄地における放牧利用が全国的に推進されている。しかし、耕作放棄地における狭小面積・少頭数が放牧牛の行動やストレス反応へ与える影響は不明である。そこで、本研究では耕作放棄水田跡地放牧が、放牧牛の社会行動および尿中コルチゾール濃度に与える影響を明らかとすることを目的とした。耕作放棄水田跡地として、耕作放棄水田跡地2ヵ所(水田区: 3,673m^2および4,067m^2)、大面積・多頭数放牧地として岩手大学農学部附属寒冷FSC御明神牧場(大面積区: 22,678m^2)を調査地とした。水田区では黒毛和種繁殖牛または日本短角種繁殖牛2頭を放牧し(水田区A: 2004年5月21日-6月22日、7月28日-9月6日、水田区B: 6月24日-7月23日、8月27日-10月8日)、調査牛とした。大面積区では黒毛和種繁殖牛を含む計16〜29頭を放牧し(2004年5月31日-6月15日、8月5日-20日)、そのうち3頭を調査牛とした。行動調査は各放牧期間の初期および後期の4:00-18:00に行った。社会行動は連続観察により、それ以外の行動は1分毎のタイムサンプリングにより記録した。各行動調査の前後数日以内に1回、加えて退牧後に1回、調査対象牛の尿を採取し、尿中コルチゾール濃度を測定した。社会行動対象牛1頭あたりの親和行動の出現数は、水田区で大面積区より多かった(P<0.05)。親和行動以外の行動は両区間に差はなかった。退牧後の尿中コルチゾール濃度は、両区において差はなく、基礎値は同等であると考えられた。放牧初期の尿中コルチゾール濃度は、水田区において大面積区よりも有意に高かったが(P<0.05)、後期には差は認められなかった。水田跡地周囲では一般車両が頻繁に往来していた。少頭数での放牧であったことに加え、このような水田跡地の外部環境が、放牧初期のコルチゾール濃度を高めた一因として考えられる。しかしながら、放牧後期にはウシが環境に順応した可能性が考えられた。以上のことから、同一農家のウシを組み合わせた耕作放棄水田跡地放牧による、行動面・生理面に対する影響はないと判断される。
  • 植竹 勝治, 大塚 野奈, 長田 佐知子, 金田 京子, 宮本 さとみ, 堀井 隆行, 福澤 めぐみ, 江口 祐輔, 太田 光明, 田中 智 ...
    原稿種別: 本文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 192-198
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    動物介在活動(AAA)に飼い主と共に参加する飼い犬(Canis familiaris)のストレス反応を、尿中カテコールアミン濃度を測定することにより調べた。イヌの覚醒状態に影響すると考えられる次の2要因について検討した: 特別養護老人ホームでのAAAへの参加日数(現地調査1)および対面式での活動時における老人の座席配置(車座と並列)(現地調査2)。現地調査1では、新規参加犬8頭の活動前から活動後にかけた尿中ノルアドレナリン濃度の上昇量が、参加日数が経過するにつれて直線的に低下した(尿中ノルアドレナリン濃度の上昇量に対する参加日数(毎月1回の参加で計9日間)の回帰係数-1.213,R^2=050,P<0.05)。その一方で、活動中の各セッションにおいて、姿勢や行動を相対的に長く抑制された場合には、アドレナリン(長い抑制15.03±9.72ng/mL vs.短い抑制4.53±2.94ng/mL)とノルアドレナリン(長い抑制12.26±8.80ng/mL vs.短い抑制3.62±3.62ng/mL)の濃度上昇は、相対的に短い抑制の場合に比べていずれも有意に大きかった(共にP<0.05)。現地調査2では、尿中カテコールアミン濃度の上昇は、老人の座席配置、すなわち車座(12頭,アドレナリン10.73±9.77ng/mL;ノルアドレナリン7.13±8.01ng/mL)と並列(11頭,アドレナリン13.37±10.63ng/mL;ノルアドレナリン5.70±5.19ng/mL)間で差がみられなかった。これらの結果から、月1回の参加でも、飼い主と一緒であれば、特別養護老人ホームという新規な環境とAAAの雰囲気に、イヌは容易に順応することができ、また見知らぬ老人に囲まれたとしても、特に緊張を感じていないことが示唆された。
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