日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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44 巻, 2 号
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  • 出口 善隆, 徳永 未来, 山本 彩, 高橋 志織, 小野 康, 丸山 正樹, 木村 憲司, 辻本 恒徳, 岩瀬 孝司
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    飼育下であってもクマの行動および生理学的特徴は季節と深く関わっている。そのため、環境エンリッチメントが行動におよぼす影響も季節により変化すると考えられる。そこで本研究では、春季から秋季において盛岡市動物公園で飼育されているツキノワグマ(雌3頭)に、環境エンリッチメントを行い、行動を調査した。環境エンリッチメントの効果の季節変化について検討することを目的とした。調査は、盛岡市動物公園のクマ舎の屋外運動場で行った。ツキノワグマの雌3頭を調査個体とした。クマは9時頃に運動場に出され、16時30分頃に寝室へ入れられた。運動場には岩、パーゴラやプールが配置されていた。給餌は1日に1回16時30分頃、寝室の中で与えられた。環境エンリッチメントとして、パーゴラとプールの横あるいは水を抜いたプールに樹枝を設置した。また、調査期間中、運動場内の10ヵ所にクリを3粒ずつ隠した。隠す場所は毎日変化させた。直接観察により行動を1分毎に記録した。エンリッチメント開始直後、1週間後、2週間後および1ヵ月後に行動を調査した。エンリッチメント処理により、春季には個体遊戯行動が、夏季には探査行動と個体遊戯行動が、秋季には探査行動がそれぞれ増加した(P<0.05)。また、摂取行動は、春季では開始前と比べ僅かに増加し、夏季では逆に減少しているのに対し、秋季では3倍以上に増加した。よって、エンリッチメントとして行った餌隠しの影響がいちばん大きく現れだのは秋季と考えられた。以上より、春季から夏季には、個体遊戯行動といった摂食にかかわらない行動を促す環境エンリッチメントが、越冬に備え摂食要求が強まる秋季には、摂食にかかわる行動を促す環境エンリッチメントが効果的であることが示唆された。
  • 朴 修範, 岡本 全弘
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    飼料の小粒子を選択採食する傾向にあった放し飼い牛舎の牛群において、ペンシルバニア篩により混合飼料(TMR)の粒度を測定した。この牛群の4月から9月までの平均日乳量は29.1kgであり、乳脂率は3.50%であった。直径19mの穴を持つ篩上に残ったTMR中の大粒子の割合は飼料給与後3時間以内に40.3%から69.7%に増加した。これは主要な選択採食か3時間以内に終了したことを示す。TMRの帯状堆積内の位置により、粒度変化の速度が異なった。採食中、10分毎に測定した粒度変化により、堆積上層における選択採食けほぼ30分以内に終了することが示唆された。TMRに混合するグラスサイレージを10月上旬に切断長の短いものに変更した後、TMRの給飼直後における大粒子の割合は20%以下になった。採食による粒度変化の速度は低下し、大粒子の割合が50%に到達するのに12時間以上を要した。また、TMRの堆積の上層や下層において、1時間以内に粒度に目立った変化は観察されなかった。サイレージを切断長の短いものに変更後、乳量は変化しなかったが、1ヶ月以内に乳脂率が4. 36%に上昇した。以上の結果、サイレージの切所長が長く、TMRの大粒子の割合が30%以上の場合には選択採食は避けられないが、20%未満の場合には実質的に問題とならない水準まで選択採食を抑制できることが示唆された。
  • 石渡 俊江, 植竹 勝治, 江口 祐輔, 田中 智夫
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、我が国における商業的に一般的な収容面積(0.7m^2/頭)での輸送における肥育素牛の生理反応を、実験的に設定したより広い収容面積(1.6m^2/頭)での輸送における生理反応と比較することであった。大型の家畜運搬車(最大積載重量13,700kg)による商業的な2回の輸送において各28頭を夏季に使用し、このうち各6頭、合計12頭について調査した。より広い収容面積での実験的な輸送では、中型の家畜運搬車(4,000kg)を用いて5頭を調査した。血中グルコース濃度(mg/dL)は、より広い収容面積での輸送(24.4±7.8)に比べて、商業的な輸送(33.8±12.0)において高くなった(P<0.01)。血中乳酸濃度(mmol/L)も、より広い収容面積での輸送(0.81±0.19)に比べ、商業的な輸送(1.84±1.51)で高くなった(P<0.05)。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性(IU/L)も同様に、より広い収容面積での輸送(15.1±3.0)より、商業的な輸送(22.8±7.8)において高くなった(P<0.01)。商業的に輸送された直後に測定された血清トリヨードサイロニン濃度は、両方の収容面積で輸送された1週間後に測定された値と比べ有意に高かった(ともにP<0.05)。また、商業的輸送の直後に測定された血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性は、より広い収容面積で輸送された直後や両方の収容面積で輸送された1週間後に比べて有意に高かった(すべてP<0.01)。以上のことから、我が国の商業的輸送で一般的な収容面積では、たとえそれが福祉基準を満たしていたとしても、夏季においてはより広い収容面積での輸送に比べて、牛に負荷されているストレスが幾分強くなっていることが示唆された。
  • 福澤 めぐみ, 植竹 勝治, 田中 智夫
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 2 号 p. 176-184
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    イヌの訓練は、提示されたコマンドに対するイヌの行動が関連づけられていなければならないが、訓練に用いるイヌのコマンド認知に関する研究は少ない。本研究では、ヒトの言葉に対するイヌの反応について行動学的観点から探求することを目的とし、聴覚刺激として提示するため通常のコマンド提示に伴う視覚刺激などの非言語シグナルを排除した言語シグナルのみのコマンド「フセ」、「マテ」、「コイ」の提示に対する反応について、訓練開始1ヶ月前後の主にジャーマン・シェパード・ドッグを対象として調査した。各コマンドに施した刺激提示条件間においては、機械からコマンドを提示する条件に対するイヌの反応スコアは、訓練士がコマンドを直接提示する「Normal-TT」や実験者がコマンドを直接提示する「Normal-EE」条件に比べて低い傾向にあった。これは、訓練初期段階のイヌがビトからコマンドを直接提示されることに強く依存していることを示唆している。また、イヌは録音したコマンドを機械提示する刺激提示条件において、それらに対して正しい反応を示した。しかし、訓練初期段階のイヌのコマンドに対する反応は、ヒトが一方的にコマンドを提示するような機械提示の訓練よりも、直接コマンドを提示する方法を用いたほうが正しく導き出せると考えられる。
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