日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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44 巻, 3 号
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  • 高橋 圭二, 大滝 忠利
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    牛群の繁殖成績を向上させるためには発情発見率を高め適期での授精が不可欠である。本発情発見システムは,牛舎内の横断通路等に活動量データ収集用のアンテナを設置し,乳牛がこの上を通過する毎に活動量を収集する方式である。フリーストール牛舎における試験では,供試牛延べ47頭のうち44頭で活動量が増加し,このうち正常発情牛は41頭であった。各乳牛の積算活動量は直線的に変化し,マウンティングおよびスタンディングの発情行動出現時には急激に増加した。発情行動終了後はもとの直線の傾きで変化した。1時間あたりの平均活動量は,非発情時で5.2カウント/hで発情時に23.0カウント/hとなり,非発情時の4.4倍となった。活動量の増加出現時間は平均約12.7時間で,スタンディングおよび,マウンティングはこの時間内でみられた。排卵は活動量の増加から平均で28.5時間後に発生した。これらのことから,頻回収集システムでは発情行動出現にともなう活動量の増加をほぼ確定でき,授精適期は活動量の増加開始から4〜24時間の範囲となった。さらに,1時間あたりの活動量の変化には日変化はなく,発情行動出現時と非発情時とを明確に区分できる閾値の設定が可能であることが明らかとなった。この発情発見システムを用いて,搾乳ロボット牛舎において発情発見状況を検討したところ,発情検出率(発情牛のうち何%検出できたか)は91.4%で,発情発見精度(発情と判定したうち,何%の牛が真の発情であったか)は83.5%と非常に高いシステムであった。
  • 寺尾 裕美, 藤田 正範, 豊後 貴嗣
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    乳牛は、分娩後に劇的な代謝変化を経験することが知られている。本研究では、移行期乳牛の分娩によるストレス反応とエネルギー状態とを分離し検出することを目的とし、血漿コルチゾル、グルコース、ノルアドレナリン(NA)および遊離脂肪酸(FFA)濃度の変動を調査した。採血は、分娩14日前、分娩当日、そして分娩5、10、20および30日後に尾動脈より行った。血漿コルチゾル濃度はHPLC-UV法、血漿NA濃度はHPLC-ECD法を用いて測定した。分娩当日の血漿コルチゾルおよびグルコース濃度は他の調査日と比較して有意に高い値を示した。血漿NAおよびFFA濃度も同様に分娩当日に高い値であったが、その後分娩10日後まで高い水準であった。コルチゾルおよびグルコース濃度の散布図において、分娩当日の分布が他の調査日のものと異なることが認められた。一方、NAとFFAの散布図では、分娩当日のものに加え、分娩5および10日後の分布が他の調査日のそれと異なることが認められた。分娩当日の分布の違いは、分娩によるストレス反応であり、分娩5および10日後の違いは、乳生産のためのエネルギー不足によるものと考えられた。以上のように血液性状の変化から、移行期乳牛における分娩のストレス反応と、それに続く負のエネルギーバランスという一連の代謝変化を明確に区分することができた。
  • 二宮 茂, 金田 菜美, 安部 直重, 佐藤 衆介
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    ニホンジカの食害制御を目指して、本実験ではオオカミ糞のニホンジカに対する行動的嫌悪および心理ストレス誘発効果を検証した。実験1では、オオカミの糞(60g)、ネコの糞(40g)、屠殺時のウシの尿(200g)を入れたボトルと空のボトルをそれぞれ取り付けた飼槽を4つ用意し、1000gのヘイキューブを各飼槽に入れた。27頭のニホンジカを供試し、10分間、飼槽に対する摂食行動の観察を4回繰り返した。その結果、ニホンジカの各飼槽に対する平均摂食量は均等になると仮定した場合の期待値とは有意に異なる値であった(P<0.01,オオカミ糞:20g,ネコ糞:240g,ウシ尿:95g,コントロール:520g)。また、オオカミ糞入りのボトルを取り付けた飼槽に対して、ニホンジカが探査した後に飼槽から逃げる行動が多く観察された。実験2では、オオカミ糞の忌避効果が量的に依存するかどうか確かめるために、提示するオオカミ糞の量を少なくする処理を行った。最初の2試行では、オオカミ糞60g、10g、5gを入れたボトルと空のボトルを、あとの2試行では、1g、オオカミ糞60g、10gを入れていたボトルからそれぞれオオカミ糞を取り除いたもの(Empty60、Empty10)と空のボトルを提示した。その結果、ニホンジカの各飼槽に対する平均摂食量は均等になると仮定した場合の期待値とは有意に異なる値であり、少量でもニホンジカの摂食行動を一時的にでも抑制することが示唆された(P<0.01,オオカミ糞60g:0g,オオカミ糞10g:0g,オオカミ糞5g:0g,コントロール:1000g;P<0.01,オオカミ糞1g:30g,Empty60:140g,Empty10:120g,コントロール:715g)。次に、メスのニホンジカ6頭を用いて、オオカミ糞60gを入れたビーカーと水を入れたビーカーをシカの鼻に近づけた場合の生理的反応を計測した。その結果、オオカミ糞を提示した場合は水を提示した場合に比べ、心拍数と唾液中クロモグラニンの濃度が高かった(それぞれ、P=0.07,P=0.08)。このことからオオカミ糞はニホンジカの行動的嫌悪および心理ストレス誘発効果を導くことが明らかとなった。
  • 森田 茂, 島田 泰平, 松岡 洋平, 干場 信司
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 3 号 p. 220-227
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究では、フリーストール牛舎における乳牛採食に伴う給与飼料の形状変化を、飼料高から経時的に調査し、飼料移動の特徴を検討した。調査は、酪農学園大学附属農場にて実施した。調査開始時(13:00)に餌寄せ作業を行い、飼料形状を整えた。飼料高の測定は、2m間隔で6ヵ所(測定位置)行い、各測定位置における飼料高を飼槽壁から10cm間隔で150cmの位置まで計測した(15ヵ所)。飼料高の計測は30分間隔とし、17:00まで実施した。非接触により飼料高を測定するために起伏測定装置(JTF-FS12、ジャコム株式会社製)を用いた。飼料高測定にあわせ、5分ごとに乳牛の採食行動を観察した。調査終了時の最遠飼料端距離および最大飼料高距離は有意(P<0.05)に増加した。これに対し、最大飼料高は調査開始時とほぼ等しかった。飼槽壁から10〜50cm位置における調査終了時の飼料高は調査開始時に比べ有意(P<0.05)に減少した。70cm位置における調査開始時および終了時の飼料高に差は認められなかった。飼槽壁からの距離が90〜140cmの位置では、試験終了時の飼料高は有意(P<0.05)に増加した。飼槽壁から10cm位置における飼料高は、13:00での20cmから16:00での5cmへと直線的に減少し、16:00以降はほぼ一定であった。この傾向は、飼槽壁から20〜40cmの位置でも同様であった。調査開始時の飼槽壁から90cm位置の飼料高は約4cmであり、調査終了時の16cmへと直線的に増加した。飼槽壁から100〜120cm位置では、90cm位置と同様に飼料高は直線的に増加した。本試験のような条件下において、給与飼料の飼料高は飼槽壁からの位置が70cmを境に減少および増加といった様相の異なる変化を示し、飼料高より推定した残存飼料は、4時間経過後で極めて低い比率となることが示された。
  • 竹田 謙一, 尾崎 専, 松井 寛二, 久馬 忠
    原稿種別: 本文
    2008 年 44 巻 3 号 p. 228-231
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    毛刈り後の顔見知り個体の外貌の変化がヒツジの群内における敵対行動頻度に及ぼす影響を調べた。1群7頭のサフォーク種ヒツジを2群供試した。A群は7頭の雌(4.9±1.9歳),B群は4頭の雌と3頭の去勢雄(4.4±1.8歳)で構成された。各群の社会的安定性を確認する予備実験として,1日2時間ずつ4日間,敵対行動(闘争,頭突き,追撃,頭振り,威嚇,逃避,回避)を記録した。各群とも,毛刈り前,毛刈り直後,毛刈りの1日後,1.5ヵ月後に2時間観察した。はじめに,各群のヒツジを1頭ずつ4時間繋留した。そして,それらの供試ヒツジを同時に放した後一群として,2時間連続観察し(毛刈り前の観察),敵対行動を記録した。この観察の後に,各群2頭を除き,すべての供試ヒツジを毛刈りした。毛刈りした供試ヒツジ,毛刈りされなかった供試ヒツジともに,毛刈り前の観察と同様の方法で繋留し,敵対行動を再び一緒にした直後,1日後,1.5ヵ月後に観察した。予備実験において,各群で観察された敵対行動は非物理的敵対行動であり,社会的に安定していたと考えられた。本実験においては,各群ともに毛刈り直後の敵対行動頻度は毛刈り前と比べて有意に増加した(P<0.01)。A群における毛刈り1日後の敵対行動頻度は,毛刈り前と同程度になった。しかし,B群の毛刈り1日後における敵対行動頻度は,毛刈り直後よりは少なかったものの(P<0.01),毛刈り前よりは多かった(P<0.01)。以上より,毛刈りは顔見知り個体間の認知を短期間,混乱させることが明らかとなった。
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