日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
Online ISSN : 2424-1776
Print ISSN : 1880-2133
ISSN-L : 1880-2133
45 巻, 2 号
選択された号の論文の1件中1~1を表示しています
  • 杉原 幸子, 小針 大助
    原稿種別: 本文
    2009 年 45 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    離乳時の分離ストレス反応が他個体に及ぼす影響を明らかにするため,本研究では時間差離乳による子牛の行動的ストレス反応の同調性について調査した。生後4ヵ月齢の黒毛和種子牛6頭を供試した。供試牛はそれぞれ対照群(n=3)と後離乳群(n=3)とし,各ペアで離乳させた。8日間の調査期間中,後離乳群は対照群の1日後に離乳を実施した。発声回数と身繕い行動は連続観察で,維持行動(伏臥休息・摂食・歩行行動)とパドック内の滞在場所については1分毎の瞬間観察で記録した。離乳後1週間における総発声回数と身繕い行動の総発生回数はMann-WhitneyのU検定により比較した。また,滞在場所については,牛舎を便宜的にパドック前部・中部・後部の3ブロックに分割し,利用区画の一致率を算出した。さらに細分化した滞在場所のデータから,キルビメーターと1:150育成用牛舎縮尺図を用いて時間当たりの移動距離(m/h)を算出し,両群間での推移を比較した。対照群が後離乳群よりも総発声回数が多かったが(対照群3641±673回,後離乳群3384±715回),群間で有意な差は認められなかった。また,発声回数のピークは対照群が離乳初日,後離乳群は離乳2日目となり,その推移は両群間で異なった。身繕い行動は対照群が後離乳群よりも総行動回数が有意に多く(対照群291±56回,後離乳群122±36回,P<0.05),特に離乳後3〜6日目において発生回数が多かった。維持行動は,摂食行動と歩行行動割合の推移が両子牛間で類似した。また,離乳後1週間における滞在割合は3組それぞれで95.6%,86.6%,82.1%と高い一致率が見られた。移動距離は,後離乳群の導入日(対照群調査2日目)に両群でピークがみられ,推移に類似性が認められた。本研究の結果は維持行動と運動性は同調性が高い可能性を示唆する。しかし,離乳ストレス反応としての発声は独自性が強いと考えられた。
feedback
Top