日本においてハクビシンは農作物被害だけでなく家屋侵入被害も引き起こしている。著者らはこれまでに家屋侵入被害を防除するため、ハクビシンが侵入可能な入口の大きさおよび形状の検討を行った。しかし実験では、長方形入口の長辺は20cmに固定しており、ハクビシンはさらに小さな入口でも侵入する可能性がある。本研究では、ハクビシンが侵入するごとに長方形入口の短辺と長辺を1cmずつ短くしていく方法で、侵入可能な長方形入口の大きさと形状を検討した。また、入口前での探査行動と侵入方法を調査し、侵入戦略に関して考察した。ハクビシンが侵入した最小の入口は、H6×W12cmの横長の長方形およびH11×W7cmの縦長の長方形であった。入口への探査行動は、嗅覚的、視覚的なものだけでなく、入口に鼻先を入れるといった物理的な接触も観察された。におい嗅ぎおよび鼻先入れの持続時間は、侵入した最大の入口、侵入した最小の入口、および侵入に失敗した入口間で有意差がみられ、侵入に失敗した入口において最長であった(それぞれP<0.01)。しかし、注視の持続時間は入口間で有意差がみられなかった。これらのことから、ハクビシンは視覚情報のみでその入口から侵入するか判断するのではなく、入口に接触して侵入の可否を判断し侵入に至ることが示唆された。
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