日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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51 巻, 2 号
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  • 黄 宸佑, 竹田 謙一
    原稿種別: 本文
    2015 年 51 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    舎飼いのヒツジにおいて、羊毛食いは深刻な問題となる行動である。羊毛食いは、皮膚を傷つけられる羊毛食い受容個体ばかりでなく、羊毛食い実行個体も食べた羊毛による食滞によって死亡する可能性もある。羊毛食い行動の表現は、ヒツジのウェルフェアに悪影響を及ぼすが、この行動の発現要因については未だ明らかになっていない。ヒツジが羊毛食い行動を発現する潜在的要因として、飼育面積や給餌の作業工程などの飼育管理、あるいは硫黄や亜鉛のような必須栄養素の欠乏が挙げられているが、羊毛食い行動発現を防ぐことやその行動が発現したとき、それを制御することは難しい。本稿では、羊毛食いに関する最近の研究を概説し、現在まで示されている羊毛食いの要因について総説した。
  • 吉原 正人, 鈴木 馨, 梶 光一
    原稿種別: 本文
    2015 年 51 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    東京都は2001年からカラスの捕獲と生ゴミ対策事業を実施しており、その被害軽減に努めている。この事業では急速に数を減らすことが優先され、カラスの生活史は不明なままである。そこで著者らは都心公園内に位置する上野動物園(2001年5月〜2003年3月、1,330羽)と、郊外雑木林内にある雪印こどもの国牧場(2003年4月〜2005年3月、3,496羽)で捕獲されたハシブドガラス(Corvus macrorhynchos japonensis)を用いて、月別捕獲数とその構成(成幼、性別)を比較し、カラスの生活史解明の一助とした。月別捕獲数は、上野では9月を高いピークとする1峰性の変動が見られた。一方こどもの国では4月のピーク後、5〜7月に減少、8月以降再び増加する傾向を示した。上野の9月のピークはほぼ全て幼鳥が占め、成鳥の捕獲は年間を通じて少なかった。対照的に、こどもの国の4月のピークは大半が成鳥で、幼鳥は成鳥がほとんど捕獲されなくなる8〜11月に多数捕獲された。全捕獲個体の成幼比は、上野で成鳥20.9%:幼鳥79.1%、こどもの国で成鳥43.9%:幼鳥56.1%と、明らかな地域差が見られた(x^2=170.3、P<0.01)。捕獲カラスの性比(100×♂/♀)は上野(77.6)、こどもの国(97.5)ともにメスが多かったものの、上野のほうがその偏りが大きかった(x^2=12.6、P<0.01)。都心(上野)では、成鳥は豊富な餌資源(生ゴミ)と確立したなわばりからトラップにかかりにくく、親から自立し始めた幼鳥、特に競争に弱いメスが捕獲されやすいことが推測された。一方郊外(こどもの国)では、自立過程の幼鳥とともに、繁殖期の成鳥も多数捕獲できることが示唆された。このように都心と郊外では捕獲効果が異なることから、地域(生息地)特性を生かした管理計画が有効であると思われる。
  • 上野 安貴, 鈴木 馨
    原稿種別: 本文
    2015 年 51 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    仮親育雛は、鳥類の増殖において、種親の繁殖成功率を高めることから有用になりうる手法である。本研究では、飼育下繁殖において仮親を計画的に活用するために必須となる、種親の産卵に合わせて仮親の抱卵・育雛行動を誘発する簡便な手法の検討を行った。キンカチョウ(Taeniopygia guttata)4ペアを種親、ジュウシマツ(Lonchura striata var. domestica)4ペアを仮親のモデルとして用い、キンカチョウの産卵開始後にジュウシマツの巣に擬卵を設置することで就巣行動を誘発した。全てのジュウシマツにおいて、擬卵の設置のみで就巣行動が誘発され、キンカチョウの卵を預けられた。独立ち成功率は平均56.3±10.7%であったが、この結果は1羽も育て上げられなかった1ペアと独立ち成功率75.0±8.3%であった他のペアに二分されていた。また成功しなかったペアにおいては、擬卵設置後の抱卵開始日が4.33±0.14日目であり、他のペアにおける0.96±0.15と比較すると著しく遅かった。本研究結果は、擬卵を用いた人為的な就巣誘発は仮親育雛において利用可能であることを示している。同時に、擬卵に対する行動から仮親候補への本手法の適用可能性を事前に判断することで、最終的な育雛成功率の精度を向上させることが可能であると考えられる。擬卵を用いた本手法により、鳥類の繁殖における仮親の計画的な活用が容易になることが期待される。
  • 陳 香純, 神田 幸司, 上野 友香, 友永 雅己, 中島 定彦
    原稿種別: 本文
    2015 年 51 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2015/06/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    水族館で飼育されている2頭の雌のバンドウイルカの吐き戻し行動に及ぼす遊具導入の効果について、環境エンリッチメントの視点と行動変容法の一つである単一事例計画法を用いて検討した。特別な処置を施さないベースライン期(A)の測定に引き続き、毎日の演技訓練(給餌を伴う)の直後にフープを30分間水槽に投入する介入期(B)を行った。介入によって吐き戻し行動の回数が減少することがA期とB期の繰り返し手続きにより明らかとなったが、効果の持続性と場面間の般化に関して個体差が認められた。
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