日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
Online ISSN : 2424-1776
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52 巻, 2 号
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総説
  • 山梨 裕美, 小倉 匡俊, 森村 成樹, 林 美里, 友永 雅己
    2016 年 52 巻 2 号 p. 73-84
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    母子分離は心身の健全な発達を妨げることが知られてきた。特に大型類人猿など、成育期間が長く幼少期の母子の結びつきが強い動物種においては影響が大きい。実際に人工保育されたチンパンジーは交尾や子育て行動が適切に発現できない、社会行動が変容するなど一生を通じた影響がみられる。そのため動物福祉・保全の観点から、不必要な人工保育は避けるべきである。またたとえ人工保育をおこなったとしても、できる限り早く群れに戻すことが必要であり、そうした事例が蓄積されている。しかしエンターテイメントショーには母子分離や人工保育を助長しやすい問題点が存在し、さらに動物の正しい理解が伝わらない問題点が指摘されている。今後、科学的な知見をもとにしたチンパンジーに適した飼育管理を推進するためには、人工保育やその後の群れ復帰などに関する基準の議論や施設間が連携して問題解決にあたれるような体制づくりなどが重要である。

原著論文
  • 髙津戸 望, 青山 真人, 杉田 昭栄
    2016 年 52 巻 2 号 p. 85-97
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    ヒヨドリによる果樹食害の対策法を検討するために、各種光波長の発光ダイオード(LED)を果実に照射し、ヒヨドリの採食行動がどのような影響を受けるかを試験した。実験には、野生から捕獲したヒヨドリを供試した。赤(630nm)、黄(590nm)、緑(525nm)、青(470nm)の4種のLEDと、対照として一般的な蛍光灯を用い、各個体を単独飼育下で実験した。ヒヨドリ5羽に8段階の成熟度の異なるイチゴを同時に提示する選択実験を行なった結果、蛍光灯を照射した対照区でヒヨドリは成熟度が最も高い果実を優先的に選択したが、各色LEDの照射時には、成熟度の高いイチゴを選択する行動に有意差があった。特に青色LED照射時は、ヒヨドリがイチゴを選択するまでの時間が有意に長くなり、イチゴを1つも選択せずに終了した試行が3個体で4試行観察された。一方、ヒヨドリ4羽に7段階の成熟度の異なるブドウを同時に提示する選択実験を行なった結果、いずれのLED照射時においてもヒヨドリは成熟度の高い果実を選択し、その選択行動に相違はなく、青色LED照射時も含め、果実を選択するまでの時間にLEDによる差はなかった。これらの結果より、イチゴでは青色LEDを照射することで、ヒヨドリの採食行動を抑制することが期待できたが、ブドウのようにこの効果が期待できない果実もあることが分かった。LEDの照射によるヒヨドリの果実採食行動への影響は、本来の果実の色により異なることが示唆された。

  • 三好 智子, 袖山 修史, 加藤 元海
    2016 年 52 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、高知県内と大阪府にある5ヶ所の動物園と水族館において、飼育動物の体重と給餌内容から、1日あたりの摂餌量とエネルギー量の推定を行なった。対象生物は、体の大きさではトビからジンベエザメまでを網羅し、分類群では哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、頭足類の全35種191個体を対象とした。摂取する餌の重量やエネルギー量と体重の関係について、分類群ごとに特徴がみられるかを検証した。体重に対する餌重量の比の平均値は哺乳類で7.5%、鳥類で12.9%であったのに対して、爬虫両生類、魚類および頭足類は1%未満であった。単位体重あたりの摂取エネルギー量の平均値は哺乳類と鳥類は約100kcal/kgと高く、その他の分類群では15kcal/kg未満の低い値となった。単位体重あたりの餌摂取量に関しては恒温動物と変温動物との間に違いがみられたものの、1日あたりの摂取エネルギー量は体重の増大に比例して増加していたことから、飼育動物の摂取エネルギー量は分類群ごとに体重から推定できる可能性が示唆された。

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