日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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54 巻, 2 号
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原著論文
  • 村尾 信義, 谷田 創
    2018 年 54 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

    近年、スワブを用いて採取した唾液でイヌのストレスを評価する技術が開発されたことから、今後は動物病院などで本技術を利用した診断も行われると思われる。しかし、わが国で飼育率が高い小型犬の唾液採取技術はいまだ確立していない。そこで本研究は、小型犬に対して過大なストレスを与えずに分析に必要な唾液量を採取できるのかについて検証した。小型犬5頭と中型犬2頭(対照犬)を供試犬とし、各個体から計3回の唾液採取を行った。供試犬のストレス指標として、唾液中コルチゾール濃度、採取中のイヌの行動反応および採取者と保定者によるイヌの状態についての主観的評価を用いた。その結果、全供試犬からコルチゾール濃度の測定に必要な唾液量(中央値0.35 ml)を採取できた。唾液中コルチゾール濃度は平均 0.14μg/dl、採取中の鼻舐め行動と前肢挙げ行動の頻度はそれぞれ平均7.0回と平均2.8回で過剰なストレスを示唆する値ではなかった。さらに採取者と保定者の主観的評価からも過度な苦痛を伴うストレス的兆候は認められなかった。

  • 髙山 耕二, 溝口 由子, 大島 一郎, 中西 良孝
    2018 年 54 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

    本研究では、農業生産現場におけるガチョウの除草利用に向けた基礎的知見を得ることを目的とし、甘味(スクロース)、塩味(塩化ナトリウム)、酸味(クエン酸一水和物)、苦味(塩酸キニーネ)および旨味(グルタミン酸ナトリウム)に対するガチョウの味覚反応を2瓶選択法で明らかにした。これらの味物質を水道水で溶かし、それぞれ11段階の濃度を設け、低濃度から高濃度に向けて上昇法で試験を行った。水道水を対照とした総飲水量に対する味溶液の摂取割合を選好指数とし、χ2検定(5%水準)により選好指数39.7から60.3%を不弁別範囲、60.3%以上を嗜好範囲、39.7%以下を拒絶範囲と定義した。その結果、ガチョウは甘味濃度0.02から20%の溶液に対して嗜好も拒絶も示さなかった。一方、塩味、酸味、苦味および旨味に対してはそれぞれ2.5、0.32、0.04および5%以上で拒絶反応を示した。以上より、ガチョウはどの味物質に対しても嗜好を示さなかったものの、塩味、酸味および旨味に比べて苦味に対してはより低濃度から拒絶を示した。したがって、ガチョウは塩味、酸味および旨味よりも苦味に敏感であり、味覚により飼料を選択採食していることが示唆された。

  • Bezawork A. BOGALE, 青山 真人, 杉田 昭栄
    2018 年 54 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

    ヒトの顔写真を用いた弁別試験を行なうことによって、ハシブトガラスがヒトの表情を識別することが可能であるか否かを検討した。まず、予備試験として、供試したカラスには、一方は「笑顔」、もう一方は「真顔」(無表情)である異なる人物の写真を見せて、「笑顔」を選択させる弁別学習を課した。予備試験をクリアした6羽のカラスについて、予備試験とは異なる人物の「笑顔」と「真顔」の弁別試験を行なった。その結果、6羽中で4羽のカラスについては、「笑顔」である新規な人物を統計学的に有意に高い頻度で選択した。次に、予備試験で見せた人物の写真を用い、同じ表情をした異なる人物の組み合わせを識別する弁別試験を課した。その結果、カラスは、表情にかかわらず、予備試験において報酬を得られた人物を有意に高い頻度で選択した。一方、予備試験で使用した人物について、同一人物の「笑顔」と「真顔」を識別させる試験を行なったところ、いずれのカラスも「笑顔」を有意に高く識別することはできなかった。これらの結果から、ハシブトガラスは異なる人物については「笑顔」を「真顔」と区別でき、新規な人物については「笑顔」を一般化することが可能であることが示唆された。一方、人物の識別能力はその表情によって左右されることはないが、同じ人物において、その表情を識別する能力には乏しいと考えられた。

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