福井県内におけるマダニ類の分布相を調べるとともに,それらのライム病々原体Borrelia burgdorferiの保有状況を調杳した。
1. 県内14地点で採集できた未寄生期マダニ類は,Amblyomma testudinariumn(At), Dermacentor taiwanensis(Dt), Haemaphysalis flava, H. japonica, H. kitaokai(Hk), H. longicornis, H. megaspinosa, Ixodes monospinosus(Im), I. nipponensis, I. ovatus(Io),I. persulcatus(Ip)および不明種としてI. sp. Mt. Arashima(成虫)とI. sp. Mt. Johoji(若虫)の計4属13種であり,成虫は545個体で若虫は292個体を数えた。
2. 南方系のAtとDtは今回で各々分布北限が伸び,北方系のIpは800m以下では見出されなかった。HkとImは大型獣の分布との関係で限局的に濃厚な分布を見た。
3. 4属9種の成虫307個体からBorreliaの分離を試みた結果, Ioでは32/154(20.8%),Ipでは3/27(11.1%)で陽性であった。また,若虫ではHf 1個体からも分離できた。
4. 分離株の抗原性については,H5332(B. burgdorferi菌体表層蛋白特異的モノクローナル抗体)とH9724(ボレリア属鞭毛蛋白特異的)に対して,Io由来株の全てとHf由来株がIFA陽性であったのに対し, Ip由来株3株中の2株はH5332に反応しなかった。
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