日本ダニ学会誌
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12 巻, 2 号
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原著
  • 大久保 憲秀
    2003 年 12 巻 2 号 p. 73-85
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/08/15
    ジャーナル フリー
    ヒロズツブダニ属とその近縁の属を整理し,ヒロズツブダニ属に含まれるのは日本の3種だけとした. 本属の学名は最近Processoppia の異名とされたが, 脚の形態の差を重視してCycloppia に戻した.ミヤヒロズツブダニ(新称)C. restata の新参異名とされていたナミヒロズツブダニ(新称)C. simplex を別種として再分離した.この2種は本州から九州にかけて分布し,南西諸島では新種ザラヒロズツブダニ(新称)C. granulata に置きかわる.
  • 水谷 吉勝, 島野 智之, 青木 淳一
    2003 年 12 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/08/15
    ジャーナル フリー
    東京都八王子市廿里(とどり)町にある多摩森林科学園内の森林土壌よりササラダニの1 新種が発見され,トドリドビンダニHermanniella todori, sp. nov. と命名し,記載した.本種は胴背毛f1が長く前方に向かい,かつ近接して生えていること,桁間毛の先が丸くなっていること,体長がより小さいことなどによって同属の他種から区別される.
  • 小嶋 健, 佐久間 正幸, 福井 昌夫, 桑原 保正
    2003 年 12 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/08/15
    ジャーナル フリー
    ケナガコナダニの食餌誘引物質の誘引性を,通常の選択室試験とさらに微小移動運動補償装置(MLC) で調べた.MLC は微小動物の定位機構を調べるために, 新たに開発した装置である.MLC の位置決め装置はガラスの天板を滑らせて,その上を歩行するダニを常に装置の中心に引き戻す.MLC を制御するコンピューターは,ダニの軌跡となる天板の移動を記録するとともに,電磁バルブを制御してダニに与える気流の匂い付けをおこなう.MLC が創る仮想空間内でのダニの位置に応じて匂い付けをおこなうならば,ダニは選択室と同様の嗅覚応答をするものと期待される.天板上に市松模様の区画を設け,ダニがその中にいるときにだけ匂いを与えたところ,選択室と同じく,ダニは匂い付けされた区画に効果的に留まった.匂い付けされた区画における滞在頻度は,匂いの濃度と正の相関を示し,プロビット分析の結果,誘引効果について精度の高い推定値が得られた.
  • 鈴木 博, 山本 進, 野田 伸一
    2003 年 12 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/08/15
    ジャーナル フリー
    鹿児島と大分県で土壌サンプルより得られたDoloisia 属のツツガムシDoloisia uchikawai Suzuki, Yamamoto et Noda sp. nov. を記載した.本種はD. okabei Sasa et al., 1952 に似るが,背甲板の形が亜五角形で,感覚毛が球状,第2 脚と3 脚の基節毛が少ない点などで容易に区別される.また,他の一種D. minamii Suzuki, 1976 にも似るが,感覚毛が球状,第1 脚基節毛の数が少なく,第2,3 脚基節毛の数が多い点,第2 脚腿節に1 本の単条長毛を持つことで区別される.
  • 大橋 和典, 小坪 遊, 高藤 晃雄
    2003 年 12 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/08/15
    ジャーナル フリー
    近畿地方から発見され,新種記載されたミツユビナミハダニの発生分布および越冬能力を調査した.本種は,大阪府,京都府,兵庫県および東京都で発生が確認され,主にイヌホオズキを利用していた.冬期でも全てのステージが活動していたことから非休眠性種である考えられたが,冬期に生存している個体の割合は低く,本種は熱帯または亜熱帯に起源する侵入種であると考えられた.しかし,本種は2001 年に発見されてから少なくとも2 度の越冬に成功しており,すでに分布の拡大を始めているものと思われた.
  • 島野 智之, Roy A. NORTON
    2003 年 12 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/08/15
    ジャーナル フリー
    2 種の近似種オキイレコダニEuphthiracarus foveolatus とE. cribrarius は現在のところ分布域は重なっていない.前者は,日本のみに生息し,後者は,アジアからヨーロッパにかけて広く分布しているが日本からの報告はない.近年,原記載の誤りが指摘され,これらの種の区別が疑問視されるようになった.また,新たに採集されたオキイレコダニE. foveolatus のいくつかの標本には変異が大きく,ヨーロッパから報告されているE. cribrarius と体長などの点で,重複が認められた.
    この報告では我々はE. foveolatus の変異を明確にすると共に,近似種E. cribrarius との比較を相対的に行った.E. cribrarius は原産国(the type country)であるノルウエー産のものを用いた.いくつかの重複した形質があるにもかかわらず,日本産の標本とノルウエー産の標本は,2 つの特徴から明確に区別できた.ひとつは生殖側毛の長さの比(ag1/ag2)である.E. foveolatus の値はE. cribrarius のものよりも5 倍以上大きかった.もう一方は,E. cribrarius にある3 つの脚の毛がE. foveolatus で欠失していることである.1)第II 脚の付節の名前の付けられなかった1 本の歩脚毛,2)第III 脚の膝節の歩脚毛v',3)第IV 脚の膝節の歩脚毛v' である.以上のことから,われわれはこれらの2 種は区別でき,シノニムではないと考えている.
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