日本ダニ学会誌
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14 巻, 2 号
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原著
  • 野下 浩二, 加藤 真輝子, 井口 剛, 森 直樹, 西田 律夫, 桑原 保正
    2005 年 14 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/15
    ジャーナル フリー
     サトウダニCarpoglyphus lactis におけるneral の生合成経路をサトウダニから得た粗酵素液を用いた系で検討した.Geraniol を基質とした場合,geraniol はgeranial へと酸化され,さらに異性化を受け,neral が生成した.一方,その幾何異性体であるnerol は粗酵素液によりまったく変化しなかった.したがって,サトウダニ体内には,neral の生合成に関わるNAD+依存型geraniol dehydrogenase(GeDH)とgeranial をneral へと異性化する因子が存在することを明らかにした.また,電気泳動と活性染色法を用い,サトウダニから得た粗酵素液中に4 つのGeDH が存在することを明らかにした.動物からのGeDH の報告は本報が初である.
  • 栗城 源一
    2005 年 14 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/15
    ジャーナル フリー
    東北および北海道の主にミズゴケ湿原から得られたヤチモンツキダニ属の2 種を,ヤチモンツキダニTrhypochthoniellus brevisetus sp. nov.,タイセツヤチモンツキダニT. taisetsuensis sp. nov. として新種記載した. 従来ヤチモンツキダニ(和名)として扱ってきた種は,これまでT. setosus Willmann, 1928 としてきたが,個体群間の標本を用いた再検討により,やや大型で,後体部前部の背毛が短く,背毛h3h2から離れていることなどから新種とし,あわせて北日本における形態的な地域変異の特徴を示した.タイセツヤチモンツキダニは,小型で体表に網目構造を欠き,性殖門毛が少ないことなどから他の既知種と容易に区別できる.
  • 後藤 哲雄, 穐澤 崇, 渡邊 匡彦, 土屋 明子, 嶋崎 明香
    2005 年 14 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/15
    ジャーナル フリー
    ミヤコカブリダニ(ミヤコ)の個体数は,1990 年以降に日本各地で急激に増加し,関東以西の慣行防除果樹園ではそれまでの優占種であったケナガカブリダニ(ケナガ)と置き換わってきている.一方,北日本への分布の拡大傾向は小さい.このような種の置換と分布拡大の要因を明らかにする一環として,本報告ではミヤコの休眠性の有無と2 種の耐寒性を報告する.
    ミヤコは,短日条件と長日条件の産卵前期間が同じであり,休眠性はなかった.2 種間およびケナガの休眠と非休眠個体間の過冷却点(supercooling point)に有意差はなく,−21.9~−23.3°C であった.ケナガ・休眠雌は,−5°C で7 日以上生存した(>50%) が, ミヤコとケナガ・非休眠雌は5 日以内に70~85%が死亡した.このことからミヤコの北進が遅いのは耐寒性がわずかに弱いことも一因であると考えられた.一方,いずれの種においても生残した雌は20°C 長日条件下で2 個体を除いて産卵し,産下卵の大半がふ化した.従って,低温ストレスは産卵数やふ化率への影響が少なく,ミヤコも冬季の低温条件下で生き残ることができる地域では,定着が可能であると考えられた.
  • 岡部 貴美子, 牧野 俊一
    2005 年 14 巻 2 号 p. 105-115
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/15
    ジャーナル フリー
    日本産クマバチのアカリナリウムとハチに便乗するダニを調べ, 台湾産2 種(X. tranquebarorum, X. ruficeps) と比較した.キムネクマバチ,アマミクマバチ,オキナワクマバチ,アカアシセジロクマバチは,中胸の翅基部後方と腹部第1 節にアカリナリウムを有したが,オガサワラクマバチには中胸のアカリナリウムがなかった.日本産クマバチには,クマバチコナダニとコガタノクマバチコナダニ, ヒメクマバチカザリコナダニが便乗していた. 竹に営巣するX. tranquebarorum にはどちらのアカリナリウムもなく, 日本産とは別種のSennertia Horstia が便乗していた.Xylocopa ruficeps だけは腹部に大きく深いアカリナリウムを有し,Dinogamasus 属の一種はこのアカリナリウムだけから発見された.コナダニは胸部や翅基部からも得られた.Sennertia 属の第二若虫は付着器や大型の爪などの特殊化した形態を有し,便乗に特化していると考えられた.また,Dinogamasus 属は,大型のアカリナリウムを利用するように特殊化したと考えられた.
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