日本ダニ学会誌
Online ISSN : 1880-2273
Print ISSN : 0918-1067
ISSN-L : 0918-1067
16 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • Sri HARTINI, Dhian DWIBADRA, 高久 元
    2007 年 16 巻 2 号 p. 73-96
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/16
    ジャーナル フリー
    インドネシア・スラウェシ島において採集された食糞性甲虫の体表から,ハエダニ科2属17種が確認された.1種(Macrocheles kraepelini)を除く16種は,スラウェシ島から初めて記録された種であった.それらのうち,6種(M. convexus, M. donggalensis, M. persimilis, M. pilosellus, M. simulans, M. variodecoratus)を新種として記載した.また,これまでインドネシアから記録されている4属55種に関して,属および種までの検索表を付記した.
  • 日本 典秀, 西村 慎哉, 高藤 晃雄
    2007 年 16 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/16
    ジャーナル フリー
    核ゲノム上リボゾームDNA のITS1 領域とミトコンドリアCOI 遺伝子のDNA 塩基配列を用いて,北海道北部で採集されたカンザワハダニ個体群の遺伝的多様性を調査した.ITS では5 個,COI では13 個のDNA ハプロタイプが検出された.COI のアミノ酸ハプロタイプ数は5 個だった.分子系統学的解析によってすべてのハプロタイプの単系統性が支持され,すべてがカンザワハダニ種群であると考えられた.ITS1 とCOI ハプロタイプの地理的分布はおおむね一致していた.この地域で,他の地域に比べて大きな遺伝的多様性が認められたことから,本種群の起源は従来考えられていた東南アジアではなく,北東アジアであることが示唆された.
  • 西村 慎哉, 日本 典秀, 高藤 晃雄
    2007 年 16 巻 2 号 p. 109-119
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/16
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリアDNA のcytochrome oxidase subunit I(COI)遺伝子と核リボソームRNA 遺伝子のinternal transcribed spacer 1(ITS1)領域の塩基配列による系統解析と,マイクロサテライトマーカーを用いた個体群構造解析によって,本州北部の東北地方より採集したカンザワハダニ種群の遺伝的構造を解析した.個体群構造解析では,すべての個体群の組合せで遺伝的分化が有意であった.この個体群間の分化には,寄主植物は有意な影響を与えていたが,地理的距離の影響は有意ではなかった.分子系統解析においても,マイクロサテライトの解析においても,クズ上に発生していた個体群は他の個体群から遺伝的に分離していた.カンザワハダニの個体群間の分化は地理的隔離よりもむしろ寄主植物の影響によって促進されることが示唆された.
  • 田島 隆宣, 大橋 和典, 刑部 正博, 高藤 晃雄
    2007 年 16 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/16
    ジャーナル フリー
    多食性の植食者が,発育した寄主植物を選好することによって,他の植物で発育した個体群との遺伝的交流の頻度が低くなり,その結果,遺伝的分化が促進されてその寄主植物への特殊化が進行すると考えられる.多食性のカンザワハダニにはアジサイやキョウチクトウなどの毒性が高い植物に対しても,それぞれ特異的に適応した個体群が存在する.そこで,アジサイおよびキョウチクトウで発生する個体群について,幼若虫期に利用した寄主植物が雌成虫の寄主選好性に及ぼす影響を調査した.その結果,いずれの個体群においても,元の寄主植物上で発育した場合のほうが,好適な寄主植物であるインゲンマメ上で発育した場合よりも元の寄主植物に対する選好性が有意に高かった.このことからアジサイおよびキョウチクトウへの選好性は,これらの植物に適応した個体群がこれらの植物上で発育することによってはじめて誘導されることが明らかになった.
  • 岸本 英成, 手柴 真弓, 近藤 知弥, 宮崎 俊英, 杉浦 直幸, 戸田 世嗣, 山崎 礼一, 若月 洋, 本山 宏, 堀江 宏彰
    2007 年 16 巻 2 号 p. 129-137
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/16
    ジャーナル フリー
    九州の農薬散布体系の異なるカンキツ園において,近年,日本国内で個体数を増加させ, ミカンハダニに対する新たな天敵として注目されているミヤコカブリダニの発生状況を調査した.農薬散布体系の違いによって,ミヤコカブリダニの発生は大きく異なっていた.すなわち,慣行防除園および減農薬園では調査した園のうち50 ~ 60% でミヤコカブリダニが観察されたが,無農薬園では,調査した21 園中,本種が観察されたのは1 園2 個体のみであった.ミヤコカブリダニは,九州のいずれの県でも観察されたが,発生状況は県ごとに異なった.調査した慣行防除園および減農薬園のうち,佐賀県では,全ての園で観察され,また,長崎県,熊本県および宮崎県では60% 以上の園で観察された.一方,福岡県では,県南部では全ての園で観察され,個体数も多かったのに対し,県北部の園では全く観察されなかった.また,大分県では,本種が観察された園は30.8% と低かった.さらに,鹿児島県では,本種が観察されたのは,1 園2 個体のみときわめて少なかった.
短報
feedback
Top