日本ダニ学会誌
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21 巻, 1 号
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原著
  • 酒居 勇太, 須藤 正彬, 刑部 正博
    2012 年 21 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/06/25
    ジャーナル フリー
    ナミハダニが寄主葉の上面を産卵場所として利用しないことは,風雨や太陽光紫外線による卵への悪影響を回避するための適応だと考えられている.一方で葉面の表裏における栄養条件の違い,および上下の葉面において虫体に掛かる重力方向の違いが,ナミハダニの適応度に与える影響は十分に検討されていなかった.本研究ではインゲンマメのリーフディスク(単一葉面)を用い,その表裏および上下がナミハダニの産卵数に与える影響を評価した.葉表では葉裏よりも,下面では上面よりもそれぞれ産卵数が増加する傾向が支持された.しかし「葉表かつ上面」と「葉裏かつ下面」のリーフディスク間では,これら2因子の影響が打ち消し合い産卵数は拮抗した.すなわち葉面の栄養条件ないし重力方向について,単独でのボトムアップ効果は認められるものの,ナミハダニがインゲンマメ葉の上面(葉表)に卵を産まない理由にはならないと考えられた.
  • HARTINI Sri, 高久 元
    2012 年 21 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/06/25
    ジャーナル フリー
    インドネシア・東ジャワにあるスンプ島で食糞性コガネムシ類の体表から6種のハエダニ科ダニ類が発見された.これらのダニ類のうち,1種は新種であり,Macrocheles insulicolaと命名し記載を行った.その他の5種は,Glyptholaspis asperrima (Berlese, 1905),Neopodocinum subjaspersi Hartini and Takaku 2003,M. dispar (Berlese, 1910),M. entetiensis Hartini and Takaku 2005,M. jabarensis Hartini and Takaku 2003であり,いずれも東ジャワからは初めての記録である.
  • 齊藤 美樹, 高久 元
    2012 年 21 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/06/25
    ジャーナル フリー
    北海道の堆積籾殻から得られたトゲダニ科ヤマウチアシボソトゲダニ Hypoaspis (Euandrolaelaps) yamauchii Ishikawa 個体群について,コナダニ科ホウレンソウケナガコナダニ Tyrophagus similis Volgin各ステージに対する捕食能力および異なる温度条件下での第3若虫に対する捕食量を調査した.本種の雌成虫は20°Cにおいてホウレンソウケナガコナダニ幼虫を平均78.4頭,第1若虫20.9頭,第3若虫16.1頭および成虫4.5頭を捕食した.一方,卵は捕食されなかった.第3若虫に対する24時間の捕食量は20°Cにおいて最も多く,15°Cおよび30°Cでは有意に少なかった.なお,本種は絶食状態においても15~25°Cの条件下で21日間の生存が確認され,絶食後にホウレンソウケナガコナダニ成虫を餌として与えると捕食および産卵が確認された.
  • 兼田 武典, 亀代 美香, 中野 昭雄, 米本 謙悟, 南 利夫, 青木 一彦, 後藤 哲雄
    2012 年 21 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/06/25
    ジャーナル フリー
    2011年早春に徳島県板野郡のトンネル栽培ニンジンにホモノハダニが大発生し,収穫量が減少した.しかし,本種に有効な薬剤に関する情報がなかったため,2011年には本種への十分な防除を実施することができなかった.そこで本研究では,即効的に害虫密度を抑制できる殺虫剤,殺菌剤,気門封鎖系薬剤,粒剤(合計22剤)について,実用濃度に対する本種の感受性を検討した.その結果,供試した殺虫剤と殺菌剤17剤のうち,処理96時間後の雌成虫の死亡率が95~100%であった7剤(bifenazate,DBEDC,emamectin benzoate,lepimectin,methomyl,milbemectin,pyridaben)では殺ダニ効果が高かった.気門封鎖系の3剤は,雌成虫に対する殺ダニ効果が低かった.休眠卵に対する殺ダニ効果を検討した粒剤2剤のうち,diazinon粒剤は,対照区に較べて,生存率が約45%低下したため,ある程度の効果が認められた一方,tefluthrin粒剤処理における死亡率は対照区と変わらなかったので,効果が認められなかった.これらの結果から, 供試した22剤のうち7剤についてホモノハダニに対する殺ダニ効果が認められた.さらに7剤のうち2剤(emamectin benzoate, methomyl)は既にニンジンに登録があるので,本種が多発した場合には登録のある2剤を密度抑制のために使用できることが分かった.
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