日本ダニ学会誌
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22 巻, 1 号
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総説
  • 松尾 智英, 大倉 信彦, 角田 浩之, 矢野 泰弘
    2013 年 22 巻 1 号 p. 1-23
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    マダニ上科は主に2つの科,すなわちマダニ科(Hard tick)とヒメダニ科(Soft tick)とに分類され,マダニ科はさらにそれらの繁殖の違いによって Prostriata(マダニ科マダニ属)および Metastriata(マダニ属を除くマダニ科の属)に分けられる.すなわち,各グループに属する種はそれぞれ特徴的な繁殖システムや器官を有している.加えて,マダニ類は様々な病原体のベクターとしても重要な生物群である.Metastriataグループに属するフタトゲチマダニは単為生殖系統と両性生殖系統が存在するという特徴をもち,オーストラリア,ニュージーランド,ニューカレドニア,フィジー諸島,日本,朝鮮半島および中国・ロシア北東部に広く分布している.本種はまた Q熱リケッチア,ロシア春夏脳炎ウィルス,タイレリアおよびバベシア原虫のベクターとしても知られており,我が国における牧野の最優占種であるフタトゲチマダニは放牧牛にピロプラズマ病を媒介するという点で農学・獣医学上重要であると考えられている.そこで,我々がこれまでに明らかにしてきたフタトゲチマダニ両性生殖系統の繁殖に関する知見をここにまとめる.
原著
  • 豊島 真吾, 天野 洋
    2013 年 22 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    カブリダニの胴毛パターンの種内変異を野外個体群および室内飼育個体群で調査した.8種の野外個体群では6.4~16.1%,ミヤコカブリダニの飼育個体群では 5.8~14.8%,ケナガカブリダニの飼育個体群では 8.6~31.6%の雌成虫が胴毛の変異を示した.これら胴毛の変異は,欠失,追加,挿入,移動,幅広,短小に類別され,欠失が追加や挿入よりも多く,幅広や短小は希であった.欠失は後胴体部の腹面に多く見られ,野外個体群のケナガカブリダニでは ZV3,フツウカブリダニでは JV3 で左右同時に欠失が観察された.ケナガカブリダニのIG飼育個体群では,ZV1(個体群内に観察された全欠失の49.5%)と ZV3(同37.8%)で多く観察された.この頻度は他の飼育個体群に比べて突出して多かった.野外個体群に比べて室内飼育個体群の変異幅が広いことから,これらの胴毛の変異は発生過程における偶発的な事象というよりも遺伝形質であることが示唆された.胴毛の欠失に関する遺伝要素が野外個体群に維持されることは,系統発生で仮定されている多毛から貧毛への進化的方向性を支持する可能性がある.また,胴毛欠失が遺伝的に固定されやすいことは,カブリダニの種多様性の向上に寄与する可能性を示す.
  • 齊藤 美樹, 高久 元
    2013 年 22 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    北海道のホウレンソウ圃場の土壌から得られたヤドリダニ類 Ascidae sp. 1(マヨイダニ科),Ascidae sp. 2,タンカンホソトゲダニ HypoaspisGaeolaelapspraesternalis Willmann(トゲダニ科),トゲダニモドキ HypoaspisGaeolaelapsqueenslandicus(Womersley),Macrocheles similis Krantz & Filipponi(ハエダニ科)および Cycetogamasus diviortus(Athias-Henriot)(ヤドリダニ科)について,ホウレンソウケナガコナダニ Tyrophagus similis Volgin の各発育ステージに対する捕食能力および捕食行動至適温度を調査した.いずれの種も,ホウレンソウケナガコナダニを捕食することが明らかとなった.中型種トゲダニモドキと大型種 M. similis および C. diviortus は捕食能力が高く,卵を除く全発育ステージに対して捕食が確認された.捕食行動に適する温度帯はトゲダニモドキおよび M. similis で20~30°C, C. diviortus では15~30°C であった.
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