沖縄県のハダニ相に関する知見は乏しい。筆者らは,ナンゴクハダニが琉球列島から新種記載された機会に,この種を含むハダニ類の分布調査を1995年8月に沖縄本島で行った。13種の植物から6種のハダニを採集した。すなわち,ナミハダニ(黄緑型),ナンゴクハダニ,ミヤラハダニ,ナミハダニモドキ,カンザワハダニ,そしてシュレイハダニである。このうち,ナミハダニはビニール温室のみから,ナンゴクハダニは自然生態系の植物のみから採集された。一方向不和合性の知られているカンザワハダニは7個体群を得たが,いずれも本州のチャ個体群の雄と和合し,クズ個体群の雌と和合しないヤマブキ(kerria)系統であった。本研究ではさらに,ナミハダニモドキが沖縄にも分布するが,本州の個体群との間には著しい生殖不和合性のあることを明らかにした。本研究は,沖縄のダニ相を検討する端緒になると期待される。
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