節足動物には様々な微生物が共生しており,節足動物の生活にすくなからぬ影響を与えていることがある.昆虫では古くから細胞内に共生する微生物が観察されており(Buchner, 1965参照),ダニでも90年も前に細胞内の微生物が観察されている(Roshdy, 1961参照).また,Cowdry(1925)は,病気を起こさず世代を経て伝わるマダニの微生物について報告している.これまで,病原性の微生物については報告も多いが,病原性を示さない微生物については十分研究されているとは言えない.
本総説では,ダニの細胞内に生息する微生物,特に非病原性の微生物に焦点を当てながら,ダニと微生物との関係について概観したい.なお,共生とは一般に相利共生(mutualism),片利共生(commensalism),寄生(parasitism)を含むとされており,ここでも比較的広い意味で共生という言葉を用いる.すなわち,相利共生関係が示されていないものでも共生微生物として扱っている.
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